私の“独”と貴方の“独”

あの後ギーマさんに会釈をしてすぐに家に入った。
妖しい人だったけど、なんだか優しそうな人でよかった。
玄関で靴を脱いでいると半透明な同居人がふわりと現れる。

「おかえりなさいまし、ギーマさんはどうでしたか?」

「ただいまです、なんだかセクシーな人でした」

するとノボリさんは、そうですかと返してくるりと私に背をむけて奥に消えていった。

なんだったんだ?

頭上にハテナを浮かべながら私も家にあがり部屋に入る。
まだ中身が入っていなくて空腹状態の冷蔵庫ちゃんの腹に何か入れてやろうと財布を手に持ち、再び玄関に戻る。

「ノボリさん、私買い物行ってきますから」

奥にあるリビングまで聞こえるように言ってみたけど返事はなかった。
独り言を言っているみたいだと少し恥ずかしくなりながらも、静かな家に向かって小さくいってきますと呟く。それでも返事はなかった。




* * *




何故だかわたくし腹がたちました。

わたくしが話しを振ったのに怒るというのは筋違いだということは重々承知なのでございます。
しかしギーマさんのことを話すカツキ様が楽しそうにするものですから、年甲斐もなく子供のような態度をとってしまいました。

カツキ様と出会ったのは昨夜。
なのにこの有り様。
恋に落ちるのは簡単だけど抜け出すのは難しい、これは確か生前クダリが言っていました。その通りでございます。

まだ出会って間もない二十歳もいかない少女にわたくしは恋してしまったようです。

それにしてもどうやらわたくし、独占欲というものが強いようですね。

嗚呼、カツキ。
わたくしのもとに早く帰って下さいまし。


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