仮入部期間も無事終わり、軽音部には3人の新入部員が入ってくれた。
ドラム希望のヒビキ、ベース希望のシルバー、ギター希望のトウヤの3人。
で、俺はその事をクラスでノボリとクダリに報告中。
「新入部員入ってよかったねセイ」
「入ってくれて一安心だけどよぉ…でもあの仮入部の時の人数は何だったんだって感じ」
あの人数は本当に異様だった。思い出すだけでもげんなりする。
「興味はあったのでしょうが、現実は別ですからね」
「みんなが思ってるより難しくないんだけどなぁ」
うちの部って本当に人数少ないからな。
いつか廃部とかになりそうで怖い。
「セイ、お客さんよ」
うんうん唸ってるとカミツレが俺を呼んだ。
「あっ悪ぃ、さんきゅ」
学園のマドンナのカミツレは今日もすらっとしてモデルみたいで、美人だ。
カミツレとは実は小学校からの仲。でもそれを言ったら男達から嫉妬の対象になるのは必然だから言わないけど。言ったら刺されそうだし。
まぁそんなことは置いといて。
カミツレの言葉に教室のドア付近に目をやれば可愛い話題の後輩達の姿。
「どうした?」
「あの…セイ先輩にお願いがあって…」
緊張してんのか視線を宙に彷徨わすトウヤが可愛くて頭を撫でる。
弟にほしいよな。
「あっトウヤずりぃ! セイ先輩、俺にも!」
トウヤの肩を掴み、前に踊り出るヒビキの頭も撫でてやる。
「で、お願いって?」
何か言いかけていたトウヤに聞くと、「えっと、あー、その…」と言葉に詰まっていたのを見かねてか、つまらなさそうにしていたシルバーが口を開いた。
「セイ先輩にヴォーカル、頼みたいんです」
「えっ」
思わぬ申し出にぽかんとする俺。
まさかヴォーカル頼まれるとは思ってもみなかった。
「お、俺…?」
自分を指差して尋ねると3人はこくこくと頷いた。
「だめッスか?」
上目遣いでヒビキが俺に追い討ち(?)をかける。
「いやっ、駄目じゃないけど、俺でいいのか?」
「「「セイ先輩がいいんです」」」
3人声を揃えて答えた。さっきまで緊張してたトウヤまでもしっかりと俺の目を見据えて、だ。
参ったな。
1年生の若い力ってやつには叶わない。
「わかったよ、よろしくな」
そう告げるとヒビキはガッツポーズをして、トウヤは嬉しそうに笑みを浮かべ、シルバーは興味なさそうに目を伏せてたけど僅かに口の端が上がっていた。
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