音によって埋められていくような空間。
アンプから流れるメロディー。
窓から差し込む午後の日差し。
「こんなもんか」
「そうだね」
「それじゃあ一息入れようか」
「さすがゲン!」
1曲弾き終えて区切りが付いたのかセイとゲンは肩からそれぞれの楽器を下ろし、スタンドに立て掛ける。
そしてマツバは腰を上げ、背筋を伸ばすように大きくのびをした。
次の瞬間、先程まで演奏で支配されていた空間は一人の少年の元気な声に支配されることとなる。
「すいませーん!」
いきなりの声──しかも聞き慣れない声がしたので部屋の中にいた3人は一斉に振り向いた。
「どうしたのかな?」
声の原拠と思しき場所に、まだ幼さが抜けない顔と背格好をした少年が3人並んでいた。
ゲンは人当たりが柔らかい笑みを浮かべ、不快を与えないようなトーンで尋ねる。
「俺達入部希望なんスけど……」
その言葉にゲンとマツバとセイは顔を見合わせ、笑顔を作った。
「よろしくな! 俺はセイ、sheepってバンドのギターヴォーカルやってんだ。髪がゲンで金髪がマツバ」
「sheepのベースのゲンです、よろしくね」
「僕はマツバ、sheepのドラム担当だよ」
「まぁ立ち話もあれだし、座って喋んねぇ?」
セイは腰に手を当てて邪気の無い笑みを浮かべた。
先程の作った笑顔ではなく、本当の笑顔を。
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