「セイ!」意識がなかった俺は強制的に浮上させざるを得なかった。衝撃が俺の腹を襲ったのだ。
ぐえっと情けない声が出る。
うっすら目を開ければ目の前には明るいカナリアゴールド。
クダリとノボリの唸り声も聞こえた。どうやら起こしてしまったらしい。
「おはようセイ、昨日は全然会えなかったし電話にも出てくれなかったから寂しかったんだよ?」
少し眉を下げて寂しそうに微笑みかけるカナリアゴールドの持ち主のマツバ。
未だうまく働かない頭でぼーっとマツバを見ているとごそごそと布団の中に潜り込んでくる。追い出すのも起きるのも面倒でそのままにしているとマツバは俺を抱き枕にするように体に腕を回して、首もとに頭を擦り寄せた。
「マツバ…くすぐったい…」
声を出すと寝起きだから声が掠れていた。
──それにしてもまだ眠い。
再び眠りにつこうとするとノボリの素っ頓狂な声が耳を刺激した。
「何をなさっているのですか、あなた方は!」
寝起きの悪いクダリも流石に起きたようで「煩い、ノボリ」という声が聞こえた。クダリ、俺も同感。
「ちょっ、起きなさい!!」
そして俺の布団が剥ぎ取られる。
冷たい外気に身を震わせた。
「寒いよノボリ、布団かけて」
寒さを緩和しようと身体を縮こまらせて暖を取ろうとするもマツバが邪魔で上手く出来ない。仕方ないのでマツバで暖をとろうと足と足の間に俺の足を一本滑り込ませて、ぎゅっと抱き締めるとノボリが小さく悲鳴を上げた。
全く朝から何なんだ。
「取り敢えず離れて下さいまし!」
「やだよ、寒い」
もっと暖かくなりたくてもぞもぞ動いてマツバと更に密着すると、マツバが俺のパジャマとして着ていたTシャツをぎゅっと握った。顔は見えない。まぁそのくらい密着してるって感じ。
「寒いのでしたら、わ、わたくしが…」
俺の枕元まで身を寄せたノボリの顔は何だか赤くて、心なしか目も潤んでいる気が…
「あああ!」
そしてクダリが声を上げた。どうやらやっと覚醒したらしい。かく言う俺も段々頭が冴えてきた。
「だめ、セイ独り占めするのよくない」
俺とマツバを引き剥がし、マツバと口論を始めるクダリ。
ここでやっと俺もノボリに支えてもらいながら上体を起こして外を見た。
──今日もいい天気になりそうだ。
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