携帯電話をズボンのポケットに押し込み歩く。
ゲンからの電話を切ったあと、マツバからもメールと着信があったことを知った俺はマツバに寝てたことを文字にして送信した。
マツバは決まって朝と夜に、おはようとおやすみの電話を入れてくる。前にミナキにそれを言ったら「俺には来ない」って言ってた。……なんで?まぁ可愛いからいいけどな。
「セイ、こっち」
ゲンが中庭に備え付けられていたベンチに座りながら、分かりやすいようにか携帯電話の画面を光らせて振った。
夜の中庭は、点々と明かりが灯されていて何だか幻想的だった。
「で、どうしたんだよ」
ゲンの横に腰を下ろすとズボン越しにひんやりとした冷たさが伝わってきた。
「眠れなくて一人でここに来たんだけど」
見てごらん、と空を指差したゲンに釣られて俺も空を見上げる。
するとそこには満天の星空が広がっていた。
いつも見ているような夜空とは違う星の数。
こんなの今まで見たことない。
「すっげ…」
自然と零れ出た言葉。それは少し掠れていた。
「これを独り占めするのは勿体無い気がしてね」
俺は悪戯っぽく笑ったゲンの頬をオレンジの光が照らしていて奇麗だと思った。ぼーっとゲンに見惚れていたらゲンは俺の唇に人差し指をそっと押し当てる。
「マツバやみんなには秘密だからね」
にこっと穏和な笑顔。
なんでマツバ達には秘密なのか分からなかったけど、頷いておいた。
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