「おおー!」
夕飯時になると大広間に集められた俺達の目の前にはご馳走が並べられた。
この地方の郷土料理らしいそれらは照明の光を浴びてきらきらと輝いている。
「美味しそうだな」
「そうですね」
「あ、これ鯛かな?美味しそうっ」
ノボリも見てるだけで涎が出そうな料理の数々に目を輝かせてる。ノボリがこれなんだから言わなくてもわかるとは思うけど、俺とクダリの目もきらきら。
「海鮮物は新鮮であることが一番でございます」
口角を持ち上げて呟くノボリはどうやら刺身が好きらしい。
班ごとで食事をとる決まりになっているので俺達の向かい側にはカミツレとフウロが座ってる。
カミツレははしゃぐ俺達を一瞥してから目の前に置かれた小皿を眺め、フウロは終始にこにこしている。クダリと似たような反応だな。
それにしてもカミツレのやつ、貝類全般苦手だったよな?給食で味噌汁に入ってたりしても毎回俺に食わせてたし。
今日海鮮だし貝類だって沢山出てる。
「どうすんだ…」
「?何か仰いましたか」
ぽつりと呟いた俺の声はしっかりノボリの耳にキャッチされていたらしい。
「え、いや、何でもない」
首を横に振り独り言だから気にしないでくれと言う。
そうですかとノボリが視線を料理に移したのを見届けてからまたカミツレを見た。
それからいただきますの号令と共に各々が箸を手に取りご馳走を口に運び始める。
さっきまでは俺も周りと同じでご馳走のことしか頭に無かったが、カミツレのことしか頭になかった。
まあ残せばいい…って思いたいところだけど、なるべく残すなっていうのが学校。食べ物を粗末にしないって方針は正しいと思う。思うんだけど…。
黙々と箸を動かす周囲とノボリの視線に気が付き、慌てて箸を動かした。
次第に男同士のくだらない会話も弾み始める。料理も美味しい。上機嫌なカミツレの事は思考の端の方へ追いやられた頃事件は起きた。
「セイ」
「ん?」
カミツレに呼ばれ目を向ければ、俺の口元に箸をやり「はい」と言う。
ホタテの挟まれた箸からそれをごく自然に口の中へ。
もぐもぐと咀嚼する俺は何にも考えてなかった。
あれだけさっきまで考えいたのに、2年間隠し通してきた事実をいとも簡単に露呈。
そのことに俺が気が付くのは、男達の悲鳴が上がる数秒後のこと。
←