アップテンポな速さで | ナノ


頼り


入館式も済ませた俺達は各自の部屋に移動していた。
廊下にいる奴らが部屋長に向かって早く鍵を開けろと催促しているのが見受けられる。
いや、うちの班も約1名がそんな感じだけどさ。
 
「ノボリ、セイ!早く早く!」
 
数メートル先にある扉の前でぴょんぴょん跳ねてこっちに手を振るクダリ。
 
「わかりましたから、そんなにはしゃがないで下さいまし」
 
若干呆れ気味のノボリが鍵を片手に申し訳程度に小走りをした。
クダリは鍵をノボリから半ば強引に手に入れ、鍵穴に挿し入れて回す。
ガチャリと扉が開いたことを告げる音にこれまた乱暴に部屋の中に姿を消したクダリ。それに続くようにノボリと俺が部屋に入った。
 
班は俺とクダリとノボリ、それからカミツレとフウロの5人だ。
部屋はその班を男女で分けたメンバーと決まってる。俺としては仲が良い5人が集まったから結構気が楽。
 
「セイ、見て見て!」
 
俺がぼーっと突っ立ってるとクダリは腕を引いて和室の卓袱台を指差した。
 
「パズルだって!パズル!」
 
「え、旅館にパズルとか、まじか!」
 
思わぬ場所でのパズルとの遭遇にテンションが上がる俺。
 
だってこんなところにパズルとかあんまなくね?
 
クダリとパズルの前に正座してきらきらした眼差しを向けていると、ノボリが風呂場から顔を覗かせた。
 
「急に静かになったと思ったら、あなた方は何をしているんですか」
 
部屋長だからきっと破損箇所が無いかの点検してたんだろう。
 
「な、ノボリってパズルとか得意?」
 
にやっと笑った俺に少し顔色を悪くしたノボリ。
 
「どちらかと言えば、得意、ですが…」
 
「じゃあよろしく」
 
そう言ってクダリがノボリに差し出す。
 
「ぱ、パズル…ですか?」
 
俺はパズルが好きだ。でも生憎完成させるのは得意じゃあない。クダリも俺と一緒。そこでノボリに任せよう、という思考の一致。
 
「うん、ぼく達苦手だから」
 
「その代わり、ノボリのこと全力で応援するからな」
 
期待を寄せる俺達にノボリは溜息を1つ吐いた。








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