* 白線より内側へ(クダリ、駅員)






これは朝のラッシュ時、ライモンシティ駅プラットホームでの出来事。





「ねえ」

「おはようございますボス」


あの子ととっても仲がいいギアステーションの職員。名前は知らない。
でも、ぼく知ってるんだ。大好きなナマエのことを好きだってこと。見ててわかる。だってぼくと同じ眼差しでナマエのこと見てるから。


「もうすぐ電車来るね」

「そうですね」


たくさんの利用客が各乗車位置に並んで電車を待っている。お喋りを楽しんでたりラジオを聴いてたり本を読んでたり…。それぞれが自分のことをしている。


「君は電車、好き?」


一瞬きょとんとしたけど、すぐにイエスの返事。


「そっかあ」


なら君は幸せだね。


「よかったね」




“まもなく電車が参ります、白線の内側へお下がりください”

駅のアナウンスを聞いて利用客は手に持っていた物を鞄に押し込み、前を向く。
この光景は何度見ても面白い。誰にやれと言われたわけでもないのに皆同じ行動をとる。


「白線より内側に下がってください」


ピリリリと笛を吹いて呼び掛ける隣の彼。


そうだよ。


白線より下がらなくちゃ、ねえ?



向こうから電車が入ってくるのが見えたからぼくは今の位置から一歩下がった。
でも彼はそのままだった。


「じゃあぼく行くね」

「はい、お疲れ様です」


「ばいばい」


コートを翻して駅の奥へ進んでいくぼくの足取りは軽かった。
途中で俯いて足早にさっきぼくが立っていた方へ進む男と擦れ違う。
それを横目で見てから電車がホームへ入ってくるときの音が聞こえて既に上がっている口角をますます上げた。



どん。



鈍い音と共に悲鳴。


忽ち駅は大混乱。


ああ愉快だな。
さっきまで興味を示さなかった人物を皆して注目してる。

声を出して笑いそうになるのを堪えて、一度も振り返らないでダブルサブウェイに歩みを進めた。




白線より内側へ
(ぼくの白より外側に立ったらダメだよ)
(でも大好きな電車と一緒になれてヨカッタネ)



メタモンってとっても便利だよね、あはは!

 






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