「手紙来てるわよー!」

「ほんとー!?」

私に手紙を送ってくる人は、1人しかいない。

なり君からの手紙。

なり君は、私のお母さんの友達の子で同い年の17歳。

ずっと前から好きなんだ。

でも、最近は同じクラスの竜也君のこともちょっと気になってて・・・。

会いたいな。

なり君に・・・。

私は結局どっちが好きなのか、わかんないから。

でも・・・。


「おはよう」

「おはよう・・・」

やっぱり、かっこいいな・・・。

おもわず、見とれてしまう。

竜也君は誰にでも優しいから、竜也君を好きな人がいっぱいいる。

だから、付き合おうとかそういうことはあまり思ってないけど。

それに、クラス違うからそんな意識されるほどの距離まで行けないし。

でも、やっぱり笑顔を見ているとドキドキする。

こんな感じの穏やかな毎日。


・・・そんな毎日は、次の日から劇的に変わることを私は知るはずもない。


「今日も手紙来てるわよー!」

え?

昨日来たのに?

珍しいな・・・。

確かに、すぐ届く距離だとは思うけど。

住所によると、なり君の住んでいるところは隣の市みたいだし。

会いたいけど、会いに行ったことはない。

もしかしたら、なり君にだって彼女とか好きな人とかいるかもしれない。

一緒に歩いてたら・・・、と思うと会いに行けない。

臆病な私。

・・・とりあえず、手紙を読もう。

不毛なことを考えていてもしょうがない。

えーと・・・、なになに?

えっ・・・、えーー!

『今夜7時にあの思い出の場所に来て』

・・・なり君に二人きりで会える!?

行こう!

行って告白して諦めて帰ってこよう!

よし、じゃあ今からおしゃれしなきゃ!

こんな時ぐらい・・・、ね。


ドキドキするな・・・。

思い出の場所。

なり君と一回だけあった時に遊んだこの場所。

かなり行きにくいところだから、知っている人は少ないと思う。

だから、私となり君の秘密の場所見たいで嬉しくて、何回もこの公園に来たっけ。

いつ、来るかな・・・。

ガサッ

来た!?

・・・あれ?

「竜也君・・・?」

なんで、竜也君がいるの?

「あれ?なんでいるの?」

「竜也君こそ。ここ、知ってるの?」

「もちろん。僕の近所なんだ。犬の散歩で毎日通ってるから、今日も。で、そっちは?」

「・・・あのね」

竜也君に一部始終話した。

「そうなんだ・・・」

「そうなの。・・・来るかなぁ?」

「・・・あ、あそこに何か置いてあるよ」

指差した先には、確かに紙が置いてあった。

あんなのあったっけ?

気付かなかった。

「竜也君、目がいいんだね。私、気付かなかった」

「う・・・ん」

少し困ったような表情。

くるくる変わって、可愛いな。

「そうだ。メアド交換しようよ。お互い知らないからさ」

えっ・・・?

竜也君と、メアド交換・・・?

「いいの?」

「もちろん」

・・・うれしいなぁ。

こんなことがあっていいのかな。

「じゃあ、僕帰るね。もう遅いから、早く帰りなよ」

「うん、あの手紙とったら帰るつもり」

「そっか。じゃあ、また明日学校で」

竜也君が去っていく。

ドキドキする・・・。

この携帯の中に、竜也君の繋がれる情報が入っているんだ。

・・・あ、手紙とらなきゃ。

なんて書いてあるのかな・・・。

・・・え。

『これが最後の手紙になると思います。僕、もうすぐアメリカに行くんだ。
今までありがとう。・・・好きだよ』


・・・昨日は眠れなかった。

手紙に書いてあることがショックで。

アメリカに行くなんて。

仕方ないか・・・。

私となり君はしょせん、手紙だけでしかつながっていない。

手紙送っても、届かないよね・・・。

そんなことを思いながら、一日中過ごして気がついたら放課後になっていた。

竜也君の笑顔見ても、テンションが上がらない。

心なしか、竜也君の笑顔も今日は日が陰っているみたいで。

そういえば、最近竜也君以前みたいな笑顔見せなくなったな・・・。

でも、昨日は前みたいな笑顔見せてくれてた。

なんか嬉しい。

・・・ま、今日はなり君のことでも考えながら恋愛小説でも読んで泣くか。

そう思った時だった。

「残念だよねー。竜也君、留学しちゃうなんて」

え・・・?

「ほんと。アメリカだってね」

何それ・・・。

思わず固まる。

竜也君も行っちゃうの・・・?

慌てて携帯を開き、メールを打つ。

そんな、二人とも・・・。

・・・あれ?

竜也君となり君っていくとこ同じなんだ・・・。

あ、返信返ってきた。

『そうだよ。アメリカ行く。だから、次が最後のメールになると思う』

最後のメール・・・?

・・・なんか、見たことがある文面だな。

気のせいか。

じゃなくて!

本当なんだ・・・。

あれ、またメールが来た。

『僕は、三つ嘘ついた。ちょっとだけ言っとく。あんまり言っちゃうと、面白くないからね。
あのね、僕ら実はあった事があるんだよ。だから、あの場所も知ってたんだ。なんか変なメールでごめん。じゃあね』

・・・は?

なんか、じゃなくて絶対これ変なメールでしょ。

文章がなってない!

じゃなくて。

会った事がある・・・?

その時、私の頭の中で一つの仮説ができた。

もしかしたら・・・。

でも、確認しないといけないことがある。

急がないと・・・。

学校を出て、走る。

とにかく、走る。

そして、ある家にたどり着いた。

何度も見た住所。

電柱を何度確認しても、やっぱりそうだ。

・・・いるかな。

ドキドキしながら、インターホンを押す。

何秒たっても出てくる気配がない。

・・・そういえば。

飛行機で何時に行くんだろう。

聞いてみよう。

友達に。

その友達は結構、噂とか知ってるからたぶんわかると思う。

「もしもし・・・。あのさ、竜也君の飛行機の時間って知ってる?」

『知ってるよ。本当は教えちゃいけないんだけど・・・、まあいいや!特別に教えてあげる!今から行っても、多分間に合わないだろうし』

「え?い・・・いつなの?」

「6時だよ。で、JALの・・・」

6時。

いくら空港から近いこの町でも1時間じゃ無理かも・・・。

・・・あ、でももしかしたらバスを乗りついていけば。

行けるかもしれない・・・!

「わかった、ありがと!」

そう言って電話を切ると、走った。

つけるかな。

でも、間に合ってほしい。

会いたい。


・・・でも、運命は残酷で。

私が見たのは、そして竜也君・・・なり君が乗っている飛行機が飛び立っているところだった。


〜竜也side〜

アメリカに来てから、3カ月。

こっちでの生活も、だいぶ慣れた。

もともと英語が得意だった分、あまり苦労せずに済んだのもあるし。

そういえば、彼女は英語が苦手だったかな。

3か月たっても頭から離れない、君のこと。

最初に知り合ったのは、お母さんの友達ということで出会った時。

その時、クラスに漢字大好きのガリ勉がいて、僕の名前を「りゅうなり」と呼んだことから「なり」って呼ばれてた。

それを彼女に言ってそれから彼女はずっと僕のことなり君って呼んでたから、竜也=なりってことに気付かなかったのかな。

最初に言っておけば、未来はもう少し変わっていたかもしれない。

もう、しょうがないのにこんなこと考える僕は、きっとバカだ。

・・・帰ろうか。

その時だった。

「竜也君!」

聞き覚えのある、大好きな声が聞こえた。

振り返ると、何度も思い描いた君の姿があって。

「竜也君何も言わずに行っちゃうんだから!一生懸命バイトして、ここまで来たの!」

彼女が、駆け寄ってくる。

衝動的に・・・、抱きしめた。

「竜也君・・・!」

「好きだよ。ずっと好きだった。何も言わずに行ってごめん」

「大丈夫。もう一度会えたから、良かった」

本当に良かった。

また君に会えて。

この展開に、少し動揺してまだ信じられたない自分がいる。

でも、温かさは本物だ。


「竜也君・・・、好きだよ」


「僕も好きだよ。・・・舞」


〜完〜

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