タイムリミットまであと三日。三日だ。

そう心の中で何度も呟いてきた言葉と共に目が覚めた。しかし、そこにはいつも最初に目に映る真っ白い天井の光景はなかった。その代わり、おだやかな青空とピカピカとした朝の静かな香りが漂っていた。背中に硬い地面の感触が走る。

朦朧とした頭でも手にとるように分かることは、此処がベッドの上ではなく、外のゴツゴツとしたコンクリートの上だということだった。なに、私外で寝ちゃっていたの。いやそんなわけないだろ。一人でボケツッコミを入れていると段々と意識が鮮明にはっきりとしてきた。外で寝るわけない。私は昨日、確かにいつものように目覚ましを七時に設定して、気を紛らわすために本を少し読んで、それから電気を消していつものように布団にもぐりこんだのだ。タイムリミットを心の中で何度も呟きながら。

…ああ、なんだ。外で寝るわけがないのだから、これは夢なんだ。おかしな夢。朝のにおいも、ほんの少しの肌寒さも、妙にリアルだけど、これはリアルな夢ということで。そういうことなので。私はそれを確認して、再び目をつぶろうとした―――そのときだった。


「おい、沙絵子」


誰かの、訊き慣れたような声が微かに聞こえた。訊き慣れたようで、なんだか懐かしい声。これは、私の弟の声だ。もう随分と会話なんてしていなかったものだから、急に大人びたように聞こえる。前訊いたときはもうちょっと高かった気がするのに、中学生の男の子らしい低いテノールの声。夢の中で弟が登場するとは、人生で初めてかもしれない。

「もうちょっとゆっくり寝かせなさいよ、亮介」

うっとおしそうに適当に返事してしばらくすると、誰かに肩を掴まれた。そして、ぐわんぐわんと左右に揺れる。多分犯人は亮介。――もう、なんなのよ!

文句を言おうと思い、勢い余って目を見開いた。

相変わらずさっきと変わらない光景。なんなんだ、夢のまた夢か。こういうのが続くとストレスになってしまいそうだから、いい加減ちゃんとゆっくりと寝かせてもらいたい。とりあえず肩を揺さぶらす弟に反抗しようと後ろをバッと振り向いた。


「やっと起きた」

私は肩に置かれた亮介の手を勢いよく振りはらった。

「やっと起きたじゃないわよ!もう、いつも私のことてんで無視してるくせになんでこういうときにだけ反抗するのよ。そういうのは現実だけにしてっ。とにかく私を寝かせて!」

「いや、これが現実だから、信じがたいと思うけど」

はあ? 亮介は確か中学で毎回テストの成績上位に入っているはず。つまり私より何倍も頭が良いわけだから、夢と現実の区別なんて普通につくはず。というかこんな簡単なことに頭の良い悪いは到底関係ない。頭のネジが何本かはずれてしまったんだろうか。

「なにいってんの、これは夢にきまってん……いてっ」


ペシッと小さな痛みが頬に走る。その頬に触れた指先が亮介の女みたいな華奢で細い指だとわかる。

そして、この些細な痛み。


「え?」

つまり、私は知らないうちに外で寝ていたということ? 私いつの間に、そんな気が違っちゃっていたんだ。ゆっくりと周囲を見回してみる。しかし、そこには四角いマンションやアパート、一軒家などは立ち並んでおらず、目の前にはめいっぱいに川が流れていた。は? ますます疑問が募る。

私の住んでいる街は都会の中心部にあるから、こんな川なんて流れていないし、そしてこんなに空気は気持ち良くない。川を流れる涼しい水の音も、あさぎ色にほのかに色づく木々も、ふかふかなじゅうたんとなっている芝生も、橋の上に見える数少ない民家も、全部しらない。此処はどうみたって、田舎の景色だ。

「まあこれを見てみなって」

亮介はズイッと大きな紙面をつきつけてきた。日経新聞、とかかれてあってまだ真新しかった。さっき、橋の上のほうにあるコンビニのゴミ箱の中に入ってたんだ、と短く説明した。それがどうしたのよ、と口論する前に彼は日付の方を指さした。そこには、紛れもなく斜体の新聞の独特のフォントでこう綴られていた。平成7年 6月12日―――。

平成7年――つまり、1995年とは、私の生まれる2年ほど前だ。

こんなことがあっていいのだろうか。よくないわ。


「そういうことだから私は寝ます」

「なに、もう一度頬たたかれてほしいの?」

しれっとそういってのける弟の言葉に冷や汗を覚えた。これは、何かの悪夢だ。そう、なにかの。

次の瞬間私はとんでもない奇声を上げていた。













「絶対に、信じられない」

「もういい加減認めちゃいなよ」

「ていうか信じたくもないし、そしてあんたはなんでそんなに順応力高いのよ」

新聞に目を通したまま平然としている亮介を横目に、私は重いため息をついた。どうしてこんなことに。私はいたって何も悪いことはしていない。勉強が嫌いでテストにあまり力を出せていないだけで、何もしてない。そして、よりにもよってなんで亮介と。私一人だったら混乱して命落としそうだから、一人仲間がいてくれるだけで心強いけれども、相手は亮介だ。気まずさったらありゃしない。

私と亮介はここ一週間ほど何も口をきいていなかった。別に喧嘩した、とか反抗期とかそういう根本的なものなんかじゃない。そもそも亮介が中学に入ってからは、普段あんまり口なんてきいてないから状況がガラリと変化したわけではないのだけど。なんとなく、気まずいのだ。タイムリミットはあと三日、だった。私はそれまでに何かしら彼と喋らなければいけない、という焦燥感に駆られていた。

何故か、と問われれば答えはこう――三日後、私と亮介は離れ離れになるからだ。

正確にいうと、お母さんとお父さんの離婚が原因となる。

そのため、最後くらい何か話しでもしなきゃという気に追われていた。でも何を話せばいい? 別になんでもいいんだろう。弟がテレビを見ているときに乱入して一緒に盛り上がったりとか、勉強で分からないところでも教えてあげようか、って姉らしいことをするとか、もうなんでも。でもこういう時に限って言葉は出ないものだ。何を話せばいいのか分からない。亮介がここ最近どう思っていたのかなんて知らないけど―――彼は離婚が決まってからもいつもどおり、普通で平気な様子をしていたから別に何とも思っていないのかもしれないだろうけど―――私はとにかく焦っていた。

お母さんとお父さんから離婚の話を訊いたのは一ヶ月以上も前だった。何気ない日々の何百何ページ目かに。

「離婚しようと思うの」

久しぶりにお父さんの居る夕食の時間で、そう静かな声でお母さんに告げられた。その時、心がなんとなく空っぽになるようにぽっかりと穴が開いた気がしたけれど、さして大きな驚きはなかった。亮介もふうん、とでもいうように小さく頷いて「そっか」と言ったきりだった。

そういう雰囲気はもう何年も前から見せていた。

私たち家庭はもう何年も前から不調だった。

お父さんの会社での仕事が忙しくなって、段々と帰る時間が遅くなっていったのが発端だったろうか。お父さんは11時過ぎに帰ってくるなりソファに横たわってしばらく寝たあと、寝静まっているお母さんを起こして食事を要求したりしていた。お母さんは寝ている間に無理やり起こされるのを嫌う人だった。どちらも気が強いタイプだから、言いあいがヒートアップして私たちが真夜中に起き出してしまうこともしばしば。

休日は仕事の疲れをとるために、お父さんはずっと家で寝たりしていた。親子で外出はもう遠い昔の記憶だ。

それからお母さんとお父さんには、色々あったのだろう。誰が悪いわけじゃない。そういった些細なすれ違いが、大きなことにつながってしまっただけ。離婚、というのが二人の出した決断ならしかたがない。というより、この決断は多分あっていると思う。私も、亮介も。

そういうことで私とお母さんは家に残ったまま、一方の弟とお父さんは三日後、出張先の関西へと旅立つ。

東京と関西じゃ距離が遠い。がんばろうと思えば会いにいけるけど、正直そこまで会いにいこうと思えるわけでもない。私はお父さんと亮介とは仲が悪いわけではないけれど、あまり喋らない方だった。お父さんは気が強いけど普段はおとなしめの人だし、なんとなく威厳があって近寄りがたい。亮介もお父さん似でレイセイチンチャク、とかいう言葉が似合うやつだった。私とは正反対の亮介とは昔からなんとなく馬が合わなかった。

それから。

私はお母さんと仲の良いほうだけどお母さんは亮介に一番期待を注いでいたと思う。まあそれもしかたない。亮介は要領に長けていて、運動もできるし、おまけに一年生の頃は生徒会役員までやっていたのだから。私の弟とは思えないほど、彼には沢山の可能性が眠っていた。

お母さんは決して私と亮介を比べたりはしなかったけれど、私は私で馬鹿なりに勝手に嫉妬心を抱いていたと思う。亮介をギャフンといわせるために勉強して成績上位に入って驚かせよう―――とは何度も思ったけど、大嫌いなことを頭に詰め込むのはかなりの度胸がいる。面倒くさがりやの私は、どうしても中途半端にあきらめてしまうのだ。


というわけで、なんとなく家庭環境は複雑な形をしていた。でも今時、離婚なんて珍しくない。私のクラスの中で知る限りは三人ほど片親の人がいるし、最近では苗字は変えなくてもいいという話を訊いたことがあるし。離婚については自然と受け入れられていた。

だけど。正式に離婚する一週間前にふと思った。何か、話さなくては。亮介と。

亮介と私は十四年ほど共に過ごしてきた。されど、十四年しか一緒に生きていないのだ。長いのか短いのか何て私にはわからない。亮介にもわからない。きっと何も正解なんてないのかもしれない。だからこそ、私は亮介と何でもいいから話したい。気まずさをぶちこわしたい。彼と離れるまで、あと三日。

…それが、こんな形で話すことになるなんて。





「ねえ沙絵子。今日平成7年6月12日が何の日だかわかる?」

「そんなこと知るわけないじゃない」

亮介の突然の質問に私は頭上に疑問符を浮かべた。亮介は少し間を置いて、「…結婚記念日」と呟いた。

「結婚、記念日?」

「うん。多分、父さんと母さんの」

「なんであんたがそんなこと知ってんのよ」

「…前に、お母さんにきいたことがあって。もう何年も昔の話だけど」

亮介は遠い場所を見るように空を仰いだ。都会とは違って、なだらかに弧を描く広々とした白と青。

「それに、沙絵子が生まれる前は田舎に住んでたって、なんかきいた気がするし」

「あんた、記憶力ほんといいわねえ。お姉ちゃんにも恵んでよ」

「まあ沙絵子は一晩寝たら何もかも忘れちゃうその気楽さとかで長生きできそうだから大丈夫っしょ」

「…なんか馬鹿にされてるよね私」

「うん、馬鹿にしてる」

「おいこのクソ弟」

途端、亮介はククッと小さく笑った。目じりが少し細くなって、笑みをおさえるようにクスクスと密かに笑うその仕草は、ちょっと幼かった。私も亮介の笑顔を見て、自然と口元が緩んだ。久しぶりだ、こうやって弟と笑い合ったりするのは。

「そっかあ、でもお母さんジューンブライドかあ」

「は?ジューンブライド?」

亮介は何それ、とでも言いたげに訝しげに眉をひそめた。おっと。亮介にも知らないことがあるとは。私はにんまりと笑いながらジューンブライドの説明をした。ジューンブライドっていうのはね、六月の花嫁って意味で。六月のなんちゃらっていう神様が家庭的な人だったみたいで、六月の花嫁は幸せになれるっていうやつだよ。短く説明したあと、亮介は「まさか沙絵子に何か教えてもらう日がくるとは思わなかった」と目を細めていた。

「父さんと母さんは、幸せにはなれたのかな」

ポツリ。いつもの調子で呟くような亮介の声は、普段とは違ってなんだか消え入りそうだった。儚くて、ちぎれてしまいそうなヤワな声色。久しぶりに見せた、私の弟という立場。私はなんだかいても経ってもいられなくて、とりあえず姉らしく亮介の手をひいた。ゴツゴツと骨ばった指を自分の指に絡める。亮介はびっくりしたように私の顔を見据えた。

いつだったっけ。亮介と最後に手をつないだのは。仲がすごい良いわけでもなかったけど、小さい頃は何でも一緒だった。幼い頃からなんでもないような大人ぶった表情をすることを身につけた亮介を引っ掻き回して。でも本当はもっと寂しかったはずだ。私よりも、きっと、ずっと。その事実を亮介の震える手が語っているようだった。


「ねえ、亮介」

「お母さんたちの結婚式、見に行ってみようよ」












結婚式会場は歩いて数分のところにあった。こじんまりと佇んだ小さな教会。暗い森の背景となんだか似合っていた。

私と亮介は何か神聖な絵の描かれた厚く張られたステンドグラスからその光景を見守っていた。


お母さんは今よりずっと若々しくて、しわひとつ無かった。ベールからチラチラと見え隠れする、笑った時にゆったりと浮かびあがるエクボと、少しだけ涙目のキラキラと光る瞳孔。白く纏ったウィディングドレス。お母さん、きれい。そう呟いたら亮介もそうだねとつなずいてくれた。

その隣にはお父さんがいる。相変わらず今と変わらない仏頂面だ。私はそんなお父さんが昔から何を考えているのか分からなかった。だけど、中学生の頃とかは数学の分からないところとかよく訊きにいってたな。たまにお父さんが一人でテレビで野球観戦をしているときも、別に野球のルールをちゃんと知っているわけでもなかったけど、隣で見守っていたりしたな。ほんのちょっとだけお父さんの頬が緩んでいるように思えた。


『 永遠の愛を誓いますか 』

牧師さんのカタコトの日本語が私の脳裏に響く。心が、疼く。


「はい」


肯定した二人の声は、まるで世界で一番幸せそうだった。

ベールと純白を纏ったお母さんの姿を晒さない美しさと、黒のスーツを着飾ったスラリと背の高いお父さんのシルエットがひとつになる。亮介はか細い声で「…うそつき」と俯いて拳をぎゅっと握りしめていた。その声は少し震えていて、ちょっと泣きそうだった。私はなんとなく亮介のかたい拳をやんわりと握った。冷たくなっていた手はきっと私よりも、弱くて不安だらけなんだろう。離婚だけじゃなくて、亮介は転校までしてしまうのだ。それに慣れない大阪。大阪には小さい頃旅行で一度行ったことがあるけど、慣れない関西弁。きっと私よりも沢山の膨大な不安を抱え込んで今まで前を向き続けて、上辺に平気な顔をしていたんだろう。

…もうムヤミに大人ぶったりしなくていいんだよ。
もっと肩の力を緩めたっていいんだよあんたは。

そういってもう一度、亮介の手をきつく握りしめた。

小さな嗚咽する声。

私は目を閉じた。どこからか結婚式のフィナーレを告げるような鐘の音が、私の心臓にこだました。













私はもう一度ゆっくりと目を見開いた。

すると、そこにはいつもの真っ白い高い天井が目についた。
それから、私自らの手でoffにしないかぎり鳴りやまない甲高い目覚ましのアラーム音。

…なんだ、夢か。

そう思いながら目覚まし時計のボタンをoffに傾けた。部屋の中はシーンと静まり返った。




「…なんか、とってもカンドーテキな夢だったな…」

そうぼやきながら洗面所へとよろよろ足を運ぶと誰かにぶつかった。亮介だった。

亮介はいつものようにきっちりと顔を洗って歯磨きをしてとっくのとうにワイシャツとズボンを着ていた。いつもどおりの、朝の光景。そして、いつもなら彼はこのまま黙って私の横を素通りするはず―――だったのだけど。

「なあ、沙絵子」

「なによ」

亮介から声をかけてくるなんて珍しいな、と思いながら私は蛇口からあふれ出る透明な水を手ですくう。亮介の顔をちょっと見ると、彼は少しきまり悪そうに俯きながら「…ありがとう」と言った。

「私なんかお礼するようなことしたっけ、あんたに」

「…あの結婚式のときのやつ、夢じゃないんだよな、」

遠慮がちに呟いた亮介の言葉に私はガバッと振り向いた。やっぱり。夢なんかで完結させてしまいたくなかった。あれは、私と亮介を身を持って体験したのだ。そう。

「タイムスリップ!」

必然的に、反射的に私と亮介の声が重なった。

そしてまた同士に、ぶはっと笑いがこみ上げてきた。




リビングへ二人並びながら向かうと、お母さんとお父さんは相変わらずだった。お父さんは新聞を見据えたまま何も言わないし、お母さんはテレビをボーッと眺めていた。テレビの無機質な音が、異質な空気をさらに不自然にした。もうこの二人の間には愛なんてものが存在しないのか。今まで心もとなく頭では分かっていたつもりだったのに、それが確実となって私と亮介を呆然とさせた。

愛とは、なんておぼろげで儚いものだろう。まるで再生用紙の紙切れみたいにうすっぺらくてその気になればビリビリと引き千切ることだってできる。前まではそう思っていた。

だけど多分、違うんだと思う。

私はお母さんやお父さんや亮介が死んでしまうことがあれば、絶対に泣きわめいて一週間以上は立ち直れないだろう。だって家族なのだから。どんなに好きだって、どんなに嫌いだって、やっぱりかつては家族というつながりだったのだから、沢山泣くだろう。

昔、お母さんにひどいことをいってそのまま学校へ行ってしまったとき、私はどうしようもなくひどく不安になった。もしかしたら腹いせに家を出てしまうかもしれない。はやく家に帰りたくて、気が気じゃなかった。

お父さんに怒られたときはもっと落ち込んだ。子供に対しては怒る人ではなかったから、私はすごいひどいことをしてしまったのではないかと。私はそのとき何度も素直にあやまった。

亮介とは、性格からして気が合わないことばっかりだったけど。でも。一緒に月9のドラマを欠かさず観るとき、夏休みの宿題で読書感想文でいかに先生を感動させられるかを勝負したとき(結果は亮介の圧勝だった)、親が遅くまでどちらとも帰ってこない日は一緒に夕飯のメニューを考えたりして。やなこともあったけど楽しかったこともその倍以上にあったはずだ。


そういう感情は愛情がないと奮い立たないと思う。お母さんとお父さんはきっと、何年も悩んで苦しんでやっと出した結論なんだ。やはり、愛がないと大きな結論は出せなかったのだと、私はおもう。

一生の愛を誓う、なんてそんな言葉を一生誓うことが最も難題なことなんだ。

あまったるい甘美な響きは表向きで、裏は現実よりもずっしりと重くのしかかる。どこかで、私の知らないところで一生の愛を誓うという契約を置き去りにして、忘れて、離婚届けに判子を記す人が沢山いるんだろうな。だって、まだ沢山の可能性が待っているのだから。この先のことは分からないし、一生の愛を誓えるかどうかなんてそんなの分かりっこない。

だから、愛し合うそのときは余計、とても幸せなものなのだと思う。

恋をすると人は馬鹿なる、という言葉をどこかで訊いた。多分、その通りなんだ。


まだ私も亮介も子供だから愛の威力がどのようなものなのかは知らない。だからもうちょっと子供で。できるだけ、まだ、子供でいたい。



「ねえ、私沢山手紙送るね」

「あ? 別にメールでいいじゃん、メールで」

「東京から大阪という大きな距離を越えて手紙が届くっていうの、なんかいいじゃない。かっこいい」

「はあ、意味わかんない。俺は断固メールという一番の手軽で便利な手段で近況を報告する」

「やっぱあわないわね私たち」

リビングから出て身支度を済ませた後。そんな他愛ない会話をしながら、二人そろって大きな声でいってきます、とドアを開けた。

私たちを取り巻く日々の、朝の日差しは、優しかった。






I LOVE YOUの言い訳を/fin.







________________After finale________________

おひさしぶりです。提出が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした。元蓬生の川井まみと申します。今回のテーマからは川井まみという名前でお話をかこうと思っております。

今回時間というテーマでは「タイムリミット」「タイムスリップ」を中心にお話をかいてきました。タイムスリップネタはよくある気がするので、何かの小説とかぶっていたらすいません(;;) そして安定の長文。文章のまとまりが感じられなくてすいませんでした。

最後まで読んでくださった方も、少しでも興味本位に見てくださった方もありがとうございました。

タイトルはたとえば僕がからお借りさせていただきました。

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