これは、僕が体験した不思議な話である。

もしも、僕の得意教科が英語じゃなかったら、あんな人に出逢わなかったかもしれない
そしてあんなショックも受けなかったかもしれない。

偶然で出来た一つの文通

――メリーさんは、文通にはまったんだって。




「おーい、カイト!帰ろうぜ」

背中を叩かれ、振り向く。
そこには嬉しそうな笑みを浮かべているユウキがいた。

あぁ、帰ろうと言うと僕の隣で歩き始めた


「そうだ、カイト。俺また新しい怖い話仕入れて来たぜ。

聞け、親友!」

背中をばんと叩き、親指を立てる
お前の暑苦しいところ、たまに嫌いになるぜ。

なんてったって暑苦しいくせに怖い話大好きなんだからな。

「仕方ねえな。お前の話正直怖くねえからなぁ

まあ、はなしてみろよ。」

僕はニヤリ、と笑った

親友は今回はすげーんだからな!と言って一息。

そして、話し始めた。
 
――ここで、僕が。この話を聞いていなかったら。

もしかしたら、僕は、あんなことにまきこまれなかったかもしれない。

後悔と言うものはいつでも後にくるものだ。


「……それは、昔からこの町に伝わる話です。」

とある教室の机に、一枚の紙が入っていました。

可愛い可愛い、メモみたいな紙
そこには英語で、文が書いてあるそうです。
   
手紙は、メリーさんからのものでした。
電話で有名なメリーさんは、文通にはまり、気付いてくれそうな人の机の中に入れておくのです。

メリーさんの手紙は暇つぶしに最適でした。
 
でも、メリーさんの手紙が読めてしまった人は必ず3日後に殺されるのでした。


3年前の話です、この学校で犠牲者がでました。



僕は、普通の地味系男子だった。

まあ、漫画の主人公みたいに、地味すぎて友達が全くいない…とかではない
友達は数人、そんな話をしない僕的にはそれだけで十分だった。

「…で、こうなるわけね。だから・・・・・・」

かつかつかつ…チョークを黒板に叩きつけられる音が響く
数学の授業はあまり好きじゃない、つまらないし何より眠い。

でも、チョークの音は好きだ。子守唄みたいだと思う

「じゃあ、教科書ひらいてー」

机の中を漁る、そういえば教科書忘れてきた。
授業受ける気がなくて、鞄空っぽだった

――かさっ
 
机の中には何も入っていないはずなのに。紙の音がした
紙にはずらずらっと英文が

僕への嫌がらせか、女子っぽい丸い字だし、もしかしたら……

別に僕英語苦手じゃないんだけど…暇だし訳してるか。



Mary(マリーなのかメリーなのかわからない)が暇だから、という理由でつらつら書いてきたみたいだ。

『私、Maryっていうの

今数学の時間なんだよね。私数学が好きじゃなくてとっても暇だったの。     
私みたいに数学嫌いで暇な人、この英文を訳して時間を潰してくださーい

私、友達がいないの。よければ友達になってね。

また、この時間になったらお手紙書くね。
いつか逢いたいなあ』

みたいなことが書いてあった
他にも色々かいてあったけど、長すぎて忘れた。

あんなに長い文章を訳したのに数学の授業はまだあと14分あった。
そうだ、このマリーだかメリーだかに返事でも書くか

『初めまして、Mary。

僕の名前はタクミだ、よろしく
僕も数学嫌いだから君と離せてよかったよ。   

そういえば君、マリーて読むの?メリーって読むの?』

隣の女子に紙を貰って書く
勿論、英語で。

僕と、Maryの文通生活はここから始まった。

 


『タクミに逢いたい!14時に、その教室から見える公園で待ってる     
遊ぼう、学校を抜け出して一緒に。』

文通を始めてから何週間も経った。
Maryはマリーでもメリーでもいいというので、マリーと呼ぶことにした。

マリーから、手紙。

いつもみたいに、数学嫌だなって話じゃなかった。

”逢いたい”

まさかこんなこと言われるとは思わなかった
でも僕もマリーと逢って話してみたかったし、丁度良かったかもしれない。

ふと、時計を見てみると14時、10分前だった

早く公園に行かなくては、マリーは少し自己中心的な考えを持つやつだから
行かないと怒られるだろう。




「君が…マリー?」

公園のベンチで、縫いぐるみを持って座っている子に話しかける。
その子は金に近い茶色の髪を揺らしていた

ふわふわのショートの髪、青の綺麗な目
人形みたいな彼女に見惚れてしまった

「そう、マリーはマリーだよ。

タクミだよね?」

人形みたいな彼女はマリーだといった。

こんな子と僕は今まで文通をしていたのか、友達に言ったらきっと驚くだろうな
 
「逢いたかった、タクミ。
来てくれると信じてたよ。

ね、見てこの兎さん!マリーのお友達なの。
一人かくれんぼっていう遊びするんだけどね?

その時に使うんだよ」

人懐っこい笑みを見せてぎゅーっと少し古い兎の人形を抱き締めた

一人かくれんぼって結構危ない遊びだった気がする
マリーはそんなことをして遊んでいるのか

「マリーそんな遊びをしていて大丈夫なのか?」

「心配してくれて、ありがとう。タクミ
でもマリーは大丈夫だよ、怖いの大好きなの。

もう5回くらいしてるの、でもマリー生きてる。」

マリーは、自分の隣をぽんぽん叩いた
多分、座れって意味なんだと思う

僕はマリーの隣に座った

いろんな話をマリーとして暇を潰した


そして、また来週も逢おうという約束をした




「おい、タクミー!
  
聞けよ、メリーさんの話!」

僕の数少ない友達の一人、ゲンキが肩を思い切り叩いてきた
こいつは噂とか怖い話とかが好きでいつも僕に話してくる


「聞くよ、聞くから叩くなよ」僕は肩にある手を払う。

ゲンキは困ったように笑ってメリーさん?の話を始めた

「電話で有名なメリーさんているじゃん?
 
彼女は文通にはまったみたいでさ

大人しいやつの机の中に英語で書いた手紙を入れておくんだって、お前大人しいから気をつけたほうがいいぜ。
それに、文通してんだろ。本当気をつけろよ」

悪寒がはしる、マリーは英語で手紙を書いてきた。
机の中に入っていた…!

まさか、マリーはメリーだったのか…?

Maryというのは、マリーとも読めるしメリーとも読める。
マリーというのは嘘で、本当はメリーと言うのかもしれない

いや、まさか・・・そんなわけない。
マリーはそんな子じゃない。

明日は彼女に逢う日だ、この話は一旦忘れよう






「タクミ、お話しよう」

マリーと逢うのはこれで2回目だ

僕はマリーの隣に座る
先週あった時よりも彼女は大人しくなっていた
そして彼女の持っている人形は手が片方もげていてピーンと立った耳がよれよれになっていた。

「…なあ、マリー。

君は”メリーさんのうわさ”知ってるか?」

「うん、知ってる。

マリーいっつも、メリーさんと間違えられてお手紙お返事返してくれないの。
でもタクミは返してくれた、他の人とは違うよね?

……それとも、タクミも噂を知ってマリーを拒絶するようになる?」

よれよれの兎を撫でながら僕の目をじっと見る

Maryはマリーともメリーとも読める
それで誤解されて友達が出来なかったのか。

…僕はマリーを拒絶なんかしない。良い友達だと思っている。

「大丈夫だよ、マリー。

僕は君のこと友達だと思ってるから。」

頭を撫でると嬉しそうに笑った
可愛い友達が出来てよかったと思う

「…ね、タクミ。」

急に真面目な顔になる。さっきまで、あんなに笑ってたのにどうしたのだろうか
僕はマリーの目をじっと見た

少し、顔が赤いのは気のせいだろうか。

「あのね、タクミ。

マリーね、タクミとお手紙交換して、お話して、ってやってたら
タクミのことが好きになっちゃったの。

お願いタクミ、マリーと付き合って。」

真面目な顔がふにゃりと崩れてまた笑った

僕はマリーのことを凄く大切にしてるし。これからも話せればいいなと思ってる。
でも、マリーに恋愛感情を抱いたことは未だにない。

「ごめん、マリー。

僕恋愛とかよくわからないんだ。」

マリーの手を握って言うと、彼女は弱々しく

そう、だよね・・・といってベンチから立った

「マリー?」

「タクミ、マリー今日はもう帰るね。
兎さんと遊ばなくっちゃ。約束してるの。
また、来週逢って。手紙はちゃんと机の中に。」

彼女は兎の耳を持ち、公園から走って出ていった
少し悪いことをしたかなあ、と思いながら僕も学校にもどった。


そういえば、彼女と学校で逢ったことがない。
あの制服は僕の学校のものだったはずなのに




文通を始めてから三週間目

僕は、いつもどおり授業を抜け出し公園に向かった。
振ってしまったけど彼女はちゃんと来てくれるのだろうか。

不安に胸に潰されそうになりながら公園に着いた

あのベンチに座ってるのはマリーだろう。

でも、何かいつもと様子が違う

胸騒ぎがした。



「マリー……?

マリー!」

ベンチの下には片方目がとれ、腹には三本のナイフ、そして足がもげ、口が裂けた兎が落ちていた
そしてベンチに座っていたのは兎と同じような姿になったマリーがいた。

遠くからで気付かなかったが、血の匂いが充満している
そして、制服は血だらけ腹部にはナイフが三本


ベンチの後ろにはマリーの白い右足、左腕が落ちていた

人が死ぬと何も考えられなくなりパニックになるとよく聞いていただ、僕は違うみたいだった。
鮮明に、鮮明に記憶に残っていくマリーのこと

先週には告白してくれた。その前の週は、楽しそうに話をしてくれた。

でも今週は、冷たくなっていた。

「僕の…せいなのか…?」

僕が、彼女の告白を断ったからなのか・・・?
足の力が抜けてく、僕はその場に座り込んだ




「そういえば、タクミ。

前にメリーさんの話しただろ…?あれにはまだ続きがあったんだ
メリーさんは人を殺すときに、その標的の一番大切なものと同じ死に方をさせてくれるらしいぜ

言いたいことはそれだけだ!じゃあなー」

ゲンキは僕の真横をとおりすぎていった。

彼女が亡くなってから3日。
僕はショックから立ち直れなくてなかなか学校に行けなかった

やっとショックから、少し立ち直り学校にも行くようになった


メリーさんは、”一番大切なものと同じ死に方をさせてくれる”といった

・・・・マリーはメリーさんに狙われていたんだ。
大切にしていた、兎の人形と同じ死に方で死んでいたわけだし


きっと僕と最期に逢う三日前に、彼女から手紙が来たのだろう。

マリーにもう一度逢いたい。




こうして僕は間接的にだが、メリーさんの噂の犠牲者となった。





僕は、どこにでもいるようなサッカー少年だった。

まあ、漫画の主人公みたいに超次元な技を出したりすることは出来ないが。

「でね、ここはこうなって…」

僕は数学の授業があまり好きではなかった。
わからなくて、つまらない。

要するに楽しくない。


「じゃあ、教科書ひらいてー」

机の中を漁る、そういえば教科書忘れてきた。
授業受ける気がなくて、鞄空っぽだった

――かさっ

机の中には何も入っていないはずなのに。
紙の音がした紙にはずらずらっと英文が

僕への嫌がらせか、女子っぽい丸い字だし、もしかしたら……

別に僕英語苦手じゃないんだけど…暇だし訳してるか。


   
このとき僕は後悔した。
そういえば、ユウキが”文通にはまったメリーさんがいる”って言っていた。

そして、メリーさんは全て英語で書いてくる。

一文でも読めてしまった人は3日後―――死ぬ。



『私Maryっていうの』




fin……?

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