この世界は・・・、わけがわからん。
なぜ、この男と見たことのない場所にいるのだろうか。
どこかのビルの地下通路みたいだけど。
「こーこーはーどーこー!?」
叫んでみても、何も聞こえてこなく私の声が反響するだけ。
「うるさい」
「いや、だって!」
朝起きたら、いきなりこんなところにいましたっていう状態なのに。
冷静でいられるほうがおかしい!
おかしいなー。
ちゃんと、昨日自分のベッドに入ったはずなのに。
「とりあえず、挙動不審になってないでここがどこか調べに行くよ」
そう言って、歩いていく男、宮部怜。
冷静なこいつは、なんか一言多いから思わず言い返しちゃって、毎日私と口喧嘩になる、そんな男。
「調べるって、どうやって?」
「人に聞けばいいだろ」
そういって、近くにいた人に声をかける。
なんか、とっても個性的でカラフルな服で・・・。
「すいません、今日って西暦何年の何月何日ですか」
「今日かい?2713年の四月一日だよ」
え?
えーーーーー!?
「にっ、2713年!?」
「そうだよ。何を驚いているんだい?」
いや、何をって・・・。
い、いきなりこんなところに来たら誰でも驚きますよ・・・。
さすがの怜も、驚いた表情をしている。
「え、だって・・・。今2013年じゃ・・・」
「え?2013年!?」
え?
「まさか・・・」
な、なんでしょう。
「ちょっと僕の研究室に来てくれないか」
え、なんで・・・。
ま、まさか・・・。
珍しい洋服来てるから、コレクションにしたいとか?
「何でですか?もしかして、21世紀のことを調べているんですか?」
おお、怜ってこういうときにとっても役に立つな。
他は、もうちょっと静かにしてほしいけど。
いちいち、人のやることに突っ込むとかさー・・・。
「そうだ。詳しいことは着いてから説明しよう。ついてきてくれ」
なんか、血相抱えて歩いてますけど・・・。
しかも、歩く速度が速くて少し走らないとついていけない・・・。
あ、出口だ。
初めて見る、28世紀の外の景色。
どんなふうになってるのかな・・・?
駆け出してみてみると・・・。
「わぁ・・・!」
すごいすごいすごい!
お日さまと青い空と芸術的な形のビルと意外にあっていて、とってもきれい・・・。
・・・あのビルの中の人、どうやって歩くんだろう?
どう見ても、アーチの形のビルの斜めのところは普通に考えると歩けない・・・。
「なにボサッとしてんだよ。行くぞ」
「・・・怜は、あのビルの形とか不思議に思わないの?」
「いや、思うけど。でも、聞いたところで理解できないだろうし」
まあ、そっか。
きっと私たちがここにタイムスリップしてきたのも、
よく理解できない科学の力のせいなわけだし。
「ここが僕の研究所。主に歴史を研究してる。さあ、入って」
うわ・・・、なんかすごそうだけどよくわからない機械がいっぱい。
「はい、お茶。冷蔵庫から出したもので悪いけど」
「いいえ、いいです。ありがとうございます。えっ?」
「どうかしたのかい?」
「い、いや・・・。冷蔵庫・・・」
どうみても、冷蔵庫に見えない・・・。
あんなスカスカで冷やせるんだろうか・・・。
「ああ、あれはね・・・」
「いいです、いいです!説明されてもわかんないから!」
「そう?」
そうです・・・。
どうせ、数学の成績悪いもん・・・。
「さあ。まず、自己紹介でもしようか。僕の名前は古井流」
「宮部怜です」
「早峰舞花です」
「え!?」
え?
・・・このやり取り2回目だな。
「え、あ・・・。まさか・・・」
「え?ふ、古井さん・・・?」
「早峰舞花って・・・。え・・・」
え?え?え?
「ど、どうしたんですか・・・?」
「いや・・・。ここにもいるんですよ。早峰舞花が」
「「ええっ!?」」
お、珍しく怜と同じこと言った、てかハモッた!
「・・・もしかしたら」
「古川さん、どうかされたんですか?」
「ちょっとここで待っててくれ」
行っちゃった・・・。
「・・・しかし、こんな風になってるんだな。7世紀後の日本って」
「そうだね・・・。なんかすごいけど・・・」
多分、怜も同じことを思っていた。
すごいけど、日本じゃない。
「おまたせ」
「なにかあったんですか?」
「もしかしてと思って部屋に行ってみたら、メモが置いてあったんだ」
そこには、『転送装置に大量電気発生装置を使えば二人を送り返せる』と。
「・・・なんで知ってるんだろう?」
「さあな。本人しかわからないんじゃないのか?古川さんがわかっていたら、最初からやってるだろ」
「うん。僕も思いつかなかった」
じゃあ、なんでだろ・・・。
「・・・僕が思うに、舞花は今ここにいる舞花の将来なんじゃないかな」
「えっ?」
「だから、帰り方も知っている。それに、舞花は初めて会った時から僕のことを知っていたんだ」
じゃあ・・・、やっぱりこれは未来の私からの手紙・・・?
確かに、字もとっても似ている。
「・・・とりあえず、君たちを元の世界に送ろう」
「えっ?で、でも・・・」
「大丈夫。後のことは、舞花に聞く。裏側に書いてあったんだ。二人は早く戻してあげてねって」
元に戻るときに聞こえた。
「古川君をサポートしてあげてね。あと、起こった事に背いちゃダメ。帰れなくなるからね」
そんな、自分の言葉が。
〜26歳の舞花〜
そして、今。
目が覚めたら、この28世紀にいた。
あの道をたどって、研究室に行く。
「古川流さんですか?早峰舞花と言います」
なんでこの世界に来たとか、今はわかんないけど。
あの時、未来の私は知ってたみたいだから。
きっといずれわかるだろう。
とりあえず、今はあの時楽しめなかった分だけ28世紀を楽しもうか。