「ユウ…何で」
そう言って私を見下ろす海色の綺麗な瞳は憂色で染まり
辛そうに眉間にはしわが寄っていた。
「……」
私は何も答えなかった
否、答えられなかった
デイダラが私の上に覆い被って手首を強く掴み、逃げられないようにされて何分たっただろうか。
そしてこれをもしもあの人に見られたら――――…
任務が終わり帰って来たのはついさっき。朝早くから夕方までの任務でいつもよりハードな内容だった為、身体は睡眠を欲していた
その為鬼鮫が作ってくれた夜ご飯を食べ、簡単にシャワーを浴びてから身体を休めようと自室に入った瞬間、いきなり後ろから抱きすくめられこうやってベッドに押し倒された
「オイラは…ユウが好きなんだ。なのに…」
そこから言おうとしている言葉はおのずと分かった
でも、それは私の気持ちだし目の前で私を痛いほどに想ってくれるデイダラにはどうしようもない事だ
デイダラにはそれが分かっている。だからこうやって私に投げかける。何度も何度も同じことを、同じ言葉を
しかし何度聞かれても、何度同じ言葉を吐かれても、私の気持ちは変わらない
私の瞳に映るのは綺麗な金色の髪ではなく猫っ毛の燃えるようなあの赤い髪なのだ
「何で…何で旦那なんだよ…」
消え入りそうな声で言うデイダラの表情を、私は真っ正面から見ることは出来なかった
デイダラの事は好き。ただ、それは仲間として好きであり、けしてその好きが恋慕に変わることは無い
「デイダラ…私は、サソリが好きなの」
問いかけられる度に、私は同じ言葉を吐き続ける
そしてその度にデイダラの綺麗な金色の髪は揺れ、青色の瞳は哀しみに染まる
けしてそんな瞳を、表情をさせたい訳じゃない。同じ仲間として私はデイダラの笑う顔が好きだ。ただ、全ての事に置いてデイダラを笑顔には出来ない
するとデイダラがふ、と笑った
「…何でも負けちまうな…旦那には、うん」
手首を掴む力が緩み、私は上体を起こす
ベッドから下りたデイダラは部屋のドアに向かいドアノブを回した
そして最後に振り返って笑った
「好きだ…ユウ。うん」
その笑顔は寂しげで哀しげで辛そうで…
胸がキリ…と痛んだ
デイダラはゆっくりと部屋を出ていった
私は目を閉じて今の言葉を素直に冷静に受けとめる
脳裏に浮かび、私の頬をほんのり染めるのは
やはり赤い髪をしたあの人だけだった
切なる想い(ごめんね)
(『好き』と言ってあげられなくて)