『…頭痛ぇ』
手の平の口で粘土を咀嚼させていると、突如襲う痛みにデイダラは眉をひそめた。地味にキン、とするこの感覚は久し振りの事だった
『風邪でも引いたか』
少しでも痛みを和らげようとこめかみを押さえていると、落ち着いた声が耳に入った
その声の方向を見れば、さっきまで人形のメンテナンスの為に一言も喋らず黙々と手だけを動かしていたサソリが
今は人形を持ったまま顔を上げ
デイダラの方を見ていた
『んー、分かんねぇ…でも痛いぞ、うん』
相変わらず眉をひそめたままデイダラはさっきよりも強めにこめかみを押さえた
するとサソリは持ったままだった人形を床に静かに置いて立ち上がった
デイダラは一瞬、頭痛薬でも持ってきてくれるのかと思ったらそうではないらしい。何故なら明らかにドアとは反対方向のデイダラの方へと近付いて来たからだ
デイダラの前に立ったサソリはスッとしゃがみデイダラと同じ目線になった
そしてデイダラのおでこに手を当て離した
刹那、目の前が何かに覆われた
『!?』
二・三回瞬きをして頭を働かせるとおでこに冷たく固い感触が広がり、それがサソリのおでこだと気付くのに少し時間がかかった
『だ、旦那?』
『熱は…ねぇ感じだな』
そう言うとサソリはおでこを離した。
そんなに冷たいおでこで熱があるのかどうか分かるのだろうか、と思ったがそれを問うと殴られそうだったのでやめておいた
『熱なんてないぞ。咳も出てないしな、うん』
デイダラは先程までサソリのおでこが当たっていた自分のおでこを撫でる。
10年相方をやってきたが、こんな風にされたのは初めてで正直どう反応していいのか分からなかったが、とりあえず風邪で無いことを伝える
『薬、飲んどくか?』
サソリはまた立ち上がりドアの方へ向かおうとした
『…あ』
『どうした?』
サソリが振り向くとデイダラは『何でもない、うん』と少し焦った様な様子で言った
そして何秒かして『ありがと、旦那』と付け加えた
頭痛薬(旦那のおでこのおかげで治ったなんて言えないな、うん)