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風温  


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「気持ちいいな、うん」


暑くもなく、寒くもないゆるやかな風の抵抗を受けながら小さく伸びをし、デイダラは青い瞳で前を見据えた

バサ、と大きな羽音をさせて広い空を滑る様に飛ぶ大きな鳥の形をした自分の芸術。

その芸術作品の背中に乗り、デイダラも一緒に空を滑っていた。

いくつもの風が金色の髪を通り、その度ダメージのない長い髪は後ろへフワリと流される。


「まだか」


ふ、と後ろからかかる抑揚の無い声。

首だけを後ろに回せば、自分と同じ暁の装束を纏い、赤い髪をなびかせているサソリが、無表情に立ってこちらを見て問いかけた。


「もうちょいかかるぞ、旦那」


「もっと速く飛べねぇのか」


「無茶言うなっての」


再び前を向いたデイダラは、ふぅ、と息をつく
元を辿ればこの鳥は、相方であるサソリの為に作り、飛ばしているのだ。




事の始まりは数分前
自室で粘土を咀嚼している時、珍しく本体であるサソリが部屋の中へ入ってきた。


何の用かと思えば「傀儡をメンテする道具を買いに行きたいが、歩くのが面倒だ」といつもの表情の無い声で言われ


更に「その粘土で空を飛べる物を作れ」と言われた

デイダラはサソリのパシりでは無い

「どうせヒルコに入ってるんだし、旦那はどれだけ走っても疲れる事なんか無いだろ」
と言いたがったが、怒らせると自分も傀儡にされかねない為

しぶしぶ上から目線の頼み事を受け入れ
今現在に至る


暁の本拠地が断崖絶壁の様な場所にあるため
こうした少々の買い物には遠い場所の地に行かなければならなかった



始めは乗り気では無かったが、いざ飛んでみると今日はなかなか心地の良い風だし
雲もまばらある気持ちいい晴れ、だ


まぁいいか、うん。とデイダラは心の中で頷き、目を閉じてまた風の抵抗に身を任せる。





「…気持ち良さそうだな」


少しの間目を閉じていると
さっきより近く感じた声に目を開ける。


さっきまで距離をとって自分の後ろに立っていたサソリが、いつの間にかデイダラの隣に腰を下ろしていた。


恐ろしい程に整った横顔がすぐ近くにあり、デイダラはうろたえた。
若干鼓動が速くなり、その横顔を凝視する。


普通の人間には有り得ない肌の白さ、艶やかさに加えて明らかに造り物の質感。
それを近くでまじまじと見たデイダラは、改めて自分の相方は人間ではない、と認識する。


「おぅ、気持ちいいぞ、うん」



デイダラは鼓動の速さを無視し、返事をする。
少し前から、時々こんな風に鼓動が速くなったり、緊張したり、熱っぽかったりする
果たしてこれが一体何から来るものなのか見当がつかず、今も分からないままだ



「そうか」、と言ったサソリの表情が
ほんの少し暖かく感じた気がした。



そしてデイダラは1つの事に気付く。

【旦那を見ていたら、こうなる】事に
しかし分かるのはそこまでで、どうして相方を見ればこんな風になるのか分からなかった


首を傾げて考えていると、サソリがこっちを向いて「どうした?」と聞いてきた

「何でもない」とデイダラは笑い、また風を全身で受ける。


不思議な事にその風は、先程よりも柔らかく、温かい気がした。
そしてその温かみを感じながら目を閉じて思う




風温

(この時がずっと続けば良いな、うん)




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