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敗北は  


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…………旦那。


呼んでみたつもりなのに、それは言葉にならずただ息が漏れただけだと気付かなかった。積みに積まれた瓦礫の山の中、数百もの凶器と、人形。緻密に丁寧に造られたはずのそれらは今、ヒビが入り、ボロボロで、パッと見ただけでは人形だと認識出来るか出来ないか位の損壊だった。


そんな散らばる凶器や人形だったモノの中に紛れる様に倒れていたのは10年共にいた、相方だった。トレードマークの様な深紅の髪を広げ、地面に伏しているその姿は、デイダラにとって初めて見る光景であった。



【敗北】



すなわち、死を意味するその姿を、デイダラは認識出来なかった。思考は止まり、息の仕方さえも、忘れそうになる。喉の辺りがヒュ、と微かに鳴り耳は音を拾わない。まばたきを繰返し、その光景を見る。分かっている。彼は敗北したのだ。デイダラは静かに近付き深紅の髪に触れる。薄汚れたその髪はいまだサラサラと手に触れまだ生きているような錯覚に襲われた。



『…何でだよ』



不意にこぼれたその言葉に酷く傷付く。
分かっている。いつかは自分もこうなるのだと。
しかしそれは自分が先だと思っていた。



『……旦那』


グルグルと、思考が駆け巡り、やがて止まる。ひとつの真実に辿り着く前に。


見れば分かる、その答えに。


「旦那…なんでだよ、うん」


口の中が乾く。
デイダラはこの言葉を繰り返し、繰り返し、呟く。もう、届きはしないのに。


「旦那………」


頬に伝う透明な想いを拭うこともせず、デイダラは深紅の髪を凝視し、言葉を吐きだした。






敗北
(愛してたんだよ、本当は)

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