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亡くしたモノT  


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闇の中で目を凝らすと、闇に慣れてきた瞳はおぼろげに周りの家具を浮かび上がらせた。
己の作品がところ狭しと並ぶ棚や、使う用途が特にない机。
それと合わせて今自分が座っているベッドの他に、家具と呼べるものは無い。


丑三つ時などとうに過ぎたと言うのに、デイダラは眠れず、ただ何も言わずベッドの上で闇を見つめていた。
闇のせいか紺碧の瞳は生気がなく、僅かに聞こえる呼吸音だけがデイダラの生を訴えている。
暫く密かに呼吸を繰り返していると、不意にふわ、と頬にひんやりとした風を感じデイダラはそちらに目を向ける。


目線の先にはいつもなら閉まっているハズの窓が、今日に限って開いていた。
自分は開けた覚えが無いため、きっと小南あたりが換気の為に開けておいてくれたのだろう。
心遣いはありがたいが、部屋の隅に置かれたまだ未使用の新しい粘土が乾くかも知れない。

デイダラは静かにベッドから下りると窓を閉める為におぼつかない足取りでそちらに向かった。
平行感覚が取れない為、視界がぐらぐらと揺れる。


しかし大した距離では無いため、端から見れば普通に窓辺にたどり着いた。
開け放たれた窓を閉めようと手を掛けた時に淡い光が射し込む。




(――――…満月か…うん)




天を見上げデイダラは目を細める。
漆黒の闇の空にぽっかりと白く丸い月が煌々と輝いていた。
優しくどこか儚げな月の雰囲気を感じ、知らぬ間に口元が緩む。


そしてまたフワリと初夏を漂わせる風が頬や髪の上を滑っていった。
気をよくしたデイダラはそのまま月を見上げながら風を感じる。
聞こえないが、近くにある鬱蒼と眠る森から聞こえるであろう葉の擦れる音を想像した。



そうしてデイダラは静かにまた呼吸を繰り返し、目を閉じる。
鼻腔から深夜独特のあの爽やかで柔らかい香りが肺を包んだ。
瞬間に反対側にあるドアからよく知った気配を感じ振り返った。
床を伝って足の裏に響く僅かな揺れでドアが開いたのだと認識する。




(あぁ、オイラが起きてるのが分かったんだな)




月の光はドアまでたどり着くことはなく、デイダラの影を床に写すだけで誰が入ってきたのかは認識する事は出来ない。
しかしその気配は確実に、デイダラのよく知る人物だった。
するりと人影が見え、デイダラは柔く口角を上げた。



――――――――――――


続:)




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