NARUTO小説 | ナノ


終演  


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人形と化した自分の唯一の生身である部分を貫かれた、と気付くのに数秒かかった


「最後に気を抜いたの…サソリ」



目の前で『終わった』とでも言いたげな言葉を吐いたのは
かつて『様』を付けて慕っていたババァだった


ふと横を見れば、核を貫いた刃を持っているのはババァの操る両親


――――…気を抜いた、だと…?


暁に入ってのいざこざ以来に自分自身を使い
ましてや最後のカラクリまで見せきった上で気を抜くなど、有り得ない。


ならば何故、今この状況なのか、と自分に問えば1つの答えが見え、自分自身に舌打ちをしたくなった。



「チャクラを扱うお前は、どうしても生身の部分が必要だったんじゃろう」



俺の弱点を、まるで呪うかの様に言葉を紡ぎ続けるババァ
俺の調合した毒が、少なからずとも体内に侵入している筈なのに、どうしてそんなに喋れるのか


俺の吐いた言葉に
殺すハズだった小娘が俺の頬を殴った


「あんたは…人の命を何だと思ってんだ」


「おいおい…それが忍の言う台詞か?」


小娘の言葉に呆れと笑いが込み上げた
この身体は殴ろう蹴ろうがが痛みすら感じない、ただ小娘の拳が痛むだけ


女ってのは、無駄なことが好きな生き物だ


「何で…何であんたはそんな考え方しか出来ないんだ…」


こっちからすれば何故そんな事で俺を殴るのか不思議で仕方なかった

朽ちぬ身体、食事も必要なく歳を取ることもない。
一度なってみれば、少しは理解出来るだろう。


【永久の美】を



俺は少しずつ身体の機能が低下してきているのを感じた。
動けなくなるのも、時間の問題だ


「大蛇丸の情報を知りたがっていたな」



せっかくだ、俺を倒した褒美に教えてやろう。
俺の一言で小娘は勢いよく顔を上げる


あぁ、生きている瞳(め)だ



俺は死んでいるのだろうか、と小娘の瞳(め)を見てふと思う

こんなに強く、弱く、何かにすがりつくような光を宿していた事があっただろうか、と


そして俺は即座に否定して、笑う
俺はこの身体になる前から死んでいた
父と母と、幼き自分を繋ぐ糸が、小さな手から離れたあの日から



だんだんと瞼が重くなる
こんな感覚は、20年ぶりぐらいだろうか


先程、俺の毒で死にかけていた小娘は
俺が予想もしないババァの術で回復した


【傀儡に命すら吹き込める術】




くだらねぇ




後々に残ってゆく造形こそが、芸術だ
その造形に命なんぞ与えたら、永久も一瞬になっちまうだろ


ババァの意図は、瞬時に理解した

ヘドが出る

遅いんだよ、何もかも



俺はゆっくり目を閉じて前のめりになる
目を閉じる一瞬に見たババァの目尻が光っていたのは


きっと
気のせい、だ





終演


(『気を抜いた』んじゃねぇ、『動けなかった』んだよ)









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