『が…はッ…!?』
ドス、と腹部に異常な圧迫感が襲い、視界がグラリと揺れ、その場に膝をつく。
口の中に錆びた味が広がると同時に嘔吐感と嘔吐と共に分泌される濃い味の唾液が染み出してきた
『…この程度か、デイダラ』
人間とは言いきれない色した瞳が自分を見おろす。
タンクトップから露出した腕から覗く数々の縫い合わせた黒い糸が、さらに人間とかけ離れた存在に思わせた。
鋭く厳しい視線でデイダラを見下ろす角都は溜め息をつく。
『…サソリに勝ちたいから、稽古をつけてくれと言ったのはお前だろう』
苦しげに吐き気を抑えつけるデイダラに向かって言葉を紡ぐ。
手加減無しで構わない、と言ったのは本人だ。
『わかっ…て、る…うん』
額に脂汗を浮かべながら角都を睨み付けるデイダラは左手を腰のポーチに突っ込んだ。
『ならさっさと掛かってこい。賞金首を換金所に持っていかなければならな…』
言い終わらない内に下から鋭い蹴りが飛んでくる。それを紙一重で避けながら足を掴もうと腕を素早く伸ばすが蹴りを繰り出した足は角都が掴む前に反応し、地面をついた。
デイダラは相も変わらずポーチに手を突っ込んだまま後ろへ飛び角都と距離を取る。
『お前の術は時間が掛かる。そこも頭に入れろ』
角都の的の射た指摘を黙殺し目を伏せる。次の瞬間、角都の背後から羽音がした。
『――――…!!!!』
『…喝ッ』
途端に爆発音が響く。
白い煙が舞い上がり、標的を覆い隠す。
デイダラはまだ少し痛む腹部を抑え、立ち上る煙を凝視した。それなりのチャクラを練り込んだ起爆粘土だ。無傷では、ないはずだ。
段々と覆い隠す煙が晴れ、人影が見える。
――――…てめぇは、弱い
ふ、と思い起こされた声にデイダラは歯ぎしりをした。
――――…そんなんで、俺の側で戦う資格はねぇ。
くすんだ深紅の髪と鋭い眼光を思い出す。分かっている。自分の力量不足なのは明らかだった。
眉間に皺を寄せ、晴れた煙の先を凝視する。途端にしゅるりと現実離れした音がし、デイダラは本能で危機を感じた。起爆粘土をいくつか前方に投げ爆破させて後ろへ飛びさらに距離を取る。
『…地怨虞まで来るのかよ、うん』
含ませた笑みには焦りが滲む。
晴れた煙の先に蠢く無数の黒々しい糸。
『お前にしては上出来な使い道だ。』
先程背後に回らせた粘土の事だろう。
誉められて悪い気はしないが、今はそんな事を言っている場合ではない。
最悪の場合、心臓をもぎ取られるかも知れないのだから
さっきよりも大量にチャクラを練り込んだ起爆粘土で沢山形を作っていく。
『ふん…』
意思を持っているかのようにこちらに向かってくる地怨虞を爆破でなんとか回避する。
――――…強くなれ
言葉が反復する
デイダラは間合いを取りつつ
粘土を生成する
『……絶対に』
強くなってみせる
あんたの隣にいる為なら強く歯を食い縛り、デイダラは
目の前の敵仲間に向かって行った