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蒼い生誕  


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ザ――――…と柔らかな音が、辺りを包む




『これが海、か…うん』




目の前と同じような蒼の瞳を輝かせたデイダラは
好奇心を押さえられない様でそわそわと初めて見る『海』を見詰めていた。




『海だ。どうだ?感想は』




潮風になびく金の髪と横顔を見る。
スコープがついており、こちらからあの瞳は見えないが、口元は笑っていた。




『うん、すっげぇ綺麗だ、旦那』




顔をこちらに向け、デイダラはニィと歯を見せた
俺はふ、と微笑むとデイダラに手を伸ばす

奴の左半分を覆う黒い塊に触れる。
カチャリといとも簡単に外れたスコープはなかなか重みがあった。




『旦那』




デイダラは俺を呼んだ。
落ち着いてはいるがどことなく焦りを含ませた声色で




『塩水に付いたら確実に作り直しだ』




それに、今日ぐらい良いだろう、と続けてデイダラを見れば
奴は一瞬きょとん、と俺を見て笑った。




『行ってこいよ』




そわそわと一向に落ち着きを見せないデイダラに声をかけると、奴はさらに瞳を輝かせ『いいのか?』と聞いてきた。




『当たり前だ。お前の為にここへ来たんだからな』




スコープを手で持て遊びながら俺が笑いかけると
奴は心底嬉しそうに返事をして波間へ向かって走り出した。


やれやれとその場に腰を下ろし、後ろ姿を見つめる。

奴は波間に着くと、暫く波と同じように身体を揺らしてからしゃがんで水を触り始めた。
ぱしゃ、と微かな水音を聞きながらデイダラの背中を見る。
昔は自分よりも遥かに小さい背中だったのに、今ではもう自分の身長を越し始め、背中も大きくなった。


今日という日を迎えて、デイダラは晴れて十九になった。犯罪者と言えども今日という日に生まれた事には変わりない。
せっかくの誕生を祝う為、『どこに行きたい?』と問えば生まれて一度も見たことない海が見たいと言ったのは奴だ




デイダラとツーマンセルを組んで10年。
長いようで短いこの時間は奴の身体を大きくしただけでなく、俺自身のデイダラに対する想いまで変化していった。
最初は五月蝿くどうしようもない糞餓鬼で、何度殺してやろうかと思案したか分からないぐらいに鬱陶しい存在だった。


しかしいつの間にか表情がくるくると変わる奴の存在が視界にないと、ぽっかり穴が空いたような感覚になりはじめた。


己を人形にし、無駄な感情は省き、物事をもっと単純に簡単に考えを改めた俺にとってその心境の変化は何よりも驚きだった。
時間はかかれど認めてしまえば、懐かしいような柔らかい気持ちに包まれ、まぁ、悪い気はしなかった







『旦那』




いつの間にか波間から離れ、自分の目の前に立つデイダラはやけに苦い表情で俺を見下ろしていた。
俺は僅かに眉間にシワを寄せ、奴を見上げる。




『どうした』



『水、しょっぺぇ、うん』





何を言い出すかと思えば。
俺は口角を上げる。




『そのまま口に含んだのか…クク』


『何でこんなしょっぺぇんだ、うん』


『海には塩分が含まれてるんだよ』


『そうなのか?』


『あぁ』




舌を出して眉間にシワを寄せる奴の表情が可愛らしく、無意識に笑みがこぼれる。
まだ幼い頃、海を初めて見た自分も同じような行動を取ったなとふと思い出した




『何笑ってんだよ、うん』



まだ塩分のしょっぱさが抜けないのか
苦い表情をしたままデイダラは俺を見る。
どうやら俺に笑われた事が気に触ったらしい




『笑ってねぇよ』


『嘘つけ、今絶対笑ってただろ』





むー、と膨れだす奴の目は
塩分を含んだあの水の色に似ていた。




『なら、そのしょっぱさを和らげる方法を教えてやるよ』




俺はそう言うと奴が返事をする前に腕をつかみ、自分の方へ引き寄せる。
近付く蒼い瞳の中には確かに自分が写っていた。




『だん――――…』




俺を呼ぼうとした奴の唇を柔く塞ぐ。
傾きかけた陽に照らされながら波はいったりきたりを繰り返し、俺達を優しく包む。



触れた唇から口内へ
塩分のしょっぱさと微かに甘い味が入りこんできた







HAPPY birthday to 0505


(HAPPYbirthday!!デイダラ先輩!!ずっと大好きです!)

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