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長湯  


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『旦那ーシャワー出してくれーうん』


目をつぶり長い髪を泡だらけにしたデイダラは先に湯船に浸かっているサソリに声を掛ける。



『…………』


いくら待ってもシャワーどころか返事さえ無いサソリに溜め息をつくと、手探りでシャワーを出す蛇口を探して捻る。
暖かい水滴が無限にデイダラを包む。下を向いてガシガシと髪を掻くように手を動かせば、頭に乗った幾重もの泡は排水口へと流れていった。



ザー――――…


蛇口を再び捻りお湯を止め湯船へと向かうと、先に浸かっている旦那は下を向いていた。



『旦那』


『…んだよ』


湯船に浸かりながら呼ぶと、顔を上げた旦那の頬は朱に染まっていた。元々白い肌のせいで余計に頬の赤みが目立つ。


オイラは旦那にすす、と近寄り赤い頬にキスをする。
移動と同時に出来た波は湯船から溢れた


突然のオイラの行動に、予想通り旦那は目を丸くし舌打ちをした。


『てめぇ、煽ってんのか』


『まさか』



オイラはさも知らなさげに口を開くと、また旦那は下を向いた。
旦那はプライドが高い。
オイラが言えた話じゃないが、旦那の場合、それに付け加えて頑固だ。



『旦那、良いよ?先上がれよ、うん』



オイラがそう言うと旦那は首を横に振った。
濡れた赤い髪先から水滴がポタポタと落ちる

上気する白肌と燃えるような赤い髪にぞわり、と欲情が背筋を駆けた。



『てめぇが先に上がれよ』

『やだね、オイラまだあったまって無いんだよ、うん』




にっこりと笑って前髪を掻き上げると
また横から舌打ちが聞こえた



『……』



それから暫く無言の時が流れる。
任務で疲れた身体はじわじわと暖まり程よく汗もかきはじめた。
ふ、と横を見れば、やっぱり旦那は下を向いたままだ



(『旦那って我慢が出来ないタイプだよな、うん』)



いつもいつもさっさと風呂から上がる旦那を見てふと思った一言は、思いがけなくプライドに触ったらしい。
そしていま現在、旦那はこうやって顔を真っ赤にして湯船に浸かっているのだ。


頑固と言うか、子供というか…
オイラは自然と笑みを溢す。
いつも何かと餓鬼扱いされ、惚れた弱味に漬け込まれ、良いように使われてる。だからたまには仕返しもあったっていいだろう。


『……』



濡れた肩に重力が掛かった。



『旦那?』



見ればさっきよりも頬を赤らめた旦那が目を閉じて浅く呼吸を繰り返していた。眉間には皺が寄り、苦しそうだ。



(…そろそろのぼせて限界かな、うん)



仕返しと言っても、好きな人を苦しめたい訳じゃない。
オイラは旦那の両肩を掴み頭をどかす。



『旦那、オイラ上がるぜ。』



旦那はゆったり目を開けてオイラを見上げた。



『……俺も』



二人で湯船から上がり、オイラはタオルを手に取り身体を拭く。
旦那は頭にタオルを乗せ、近くにあった洗面台の椅子に座ってじっとしていた



『旦那、風邪引いちまうぞ、うん』


『……うっせぇ、暑いんだよ髷』



頬を朱に染め、旦那はタオルの隙間からオイラを睨む

オイラは心の中で舌を出しながら服を着た



『旦那、意外と長風呂いけるんだな うん』


オイラはにっこりと笑って旦那に言った。



『…てめぇ…』



旦那は何かと賢い。
だからオイラの言葉に含ませた意味を瞬時に理解する



『のぼせが冷めたら腰、砕いてやる』



やり過ぎたかとオイラは後悔した。



『んー…そりゃ勘弁…』


『うるせぇ、今日は寝かしてやらねぇからな』



俺を煽った罰だ、と不敵に笑う旦那を見て苦笑した。
有言実行派な旦那が腰を砕く、と言った次の日は本気で腰が痛い。更に寝不足も重なる


オイラは諦めたように溜め息をつきながら脱衣場を先に出ようとすると、後ろから旦那が鼻で笑うのが聞こえた。


とりあえず今日、腰が砕けるのは必須事項だ



避けられない運命のささやかな抵抗にとびきり熱いお茶でも飲ませてやろうかと思案する。


何かと熱い物が苦手な最愛なる人に









長湯


(たまには可愛い仕返しも必要だろ?)








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