ザリ、と細かい瓦礫を踏む音が響いた
時々しゃがんで残骸を覗きこんでは、造り物のハズレばかりで溜め息をつく
ほどなくして見つけた三つの人形
真ん中にある紅い髪の人物はわざわざ顔を確認する必要もない
何故なら、10年という月日を共に過ごした大切な人だったから
動かない人形に向かってオイラは何も言わずただただ立ち尽くしていた
…ずっと探していた人はうつ伏せで綺麗だったその顔は見えなかったが、きっとボロボロに違いない。着ていたはずの暁の装束は、面影がないほどボロボロになっていたから
『あんたの死に顔さえ見れねぇのか、うん』
何故か動かしてはいけない気がして
オイラは吐き捨てる
傍らで眠る同じ形の人形らしきものの髪の色を見て、あぁ、と洩らす。これが両親なんだな、と納得をした。紅い髪が二つ、親子対面って訳か、図々しい。
そう思うと何だか泣きたくなった。
あんたの居ない現実をこれから生きてく辛さと
もうその朱が風になびく事はない寂しさと
何より、胸に空いた大きな穴を満たしてくれる人はもう居ない事に
こんなの狡い。
まだ、何も伝えられてないのだ
『――――…さよならだ、旦那』
オイラはしゃがんで朱の髪に触れる
薄汚れてはいたが、生きてた時のまま、柔らかくしなやかだった。
それが酷く辛くてまだ生きてるのでは無いかと錯覚しそうになった所で瞑目する。
今度逢うときは
笑っていて欲しい
永遠を求める事の無いように
感情を捨てる事の無いように
過去も未来も現在も
オイラはあんたの幸せしか願わない
そして――――…
オイラは立ち上がり空を見上げた。
掌で咀嚼させた粘土で鳥を造り出しその背に乗る。
バサ、と分厚い音を鳴らし、鳥は青い空へと消えた。
時を越えても(願わくは貴方の傍に居たい)