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白いセカイ  


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「…旦那」


こぼれおちた愛しいその名前は
何もない世界に溶ける


白い白い、先の見えない世界に自分ただ一人、立っていた



周りも、足下も白い世界



何故自分はここにいるのか、ここから先どうすれば良いのか考えてみたが何も浮かんではこない



馬鹿の一つ覚えみたいに
オイラはただただ、呼び続ける
愛しい愛しいその名前を




「サソリの…旦那」




何度言ったか分からないその名前が
また口から落ちる



時間の感覚さえ無いその場所に
いったいオイラはどのぐらい居るのだろうか


「旦那」




「旦那」



「旦那」




10年という永い年月、コンビを組んでいた
その間、呼び続けた名前を大好きな名前を、呼ぶ



しかし何度呼んでも
返事が返ってくることは無い



オイラには何故かそれが分かっていた
それでも、呼ばずにはいられなかった



「旦那」



早く行かないと
また五月蝿く言われるな、うん



オイラはどこまでも白い世界を見回す
この先を歩いて行けば、あんたに会えるだろうか





待つのも待たされるのも嫌いなあんたの為に、早くあんたの側に行かなくては




そう考えて無意識に笑みがこぼれる





「旦那…今行くぞ、うん」





そう言って目を閉じれば
「早く来い」と呆れ優しくオイラの髪を撫でる愛しい人が居た




目をあけて足を踏み出す
色の無いこの世界で、あんたの鮮やかなあの色を見つけるために















白い世界


(もう一度、呼んで)

(オイラの名前を)







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