Short | ナノ


※温い微裏(多分たいしたことないです。)
※骸さんがリバ
※恭弥たんが岡っ引でなく奉行所の役人
※幕末パロディ(苦手な人は注意)


世は幕末の動乱の中にあった。


「今日は埃っぽいな・・・。」


乾燥した風に砂埃が舞い上がる。折角新調した袴も白っぽい。街の秩序を守る奉行所の役人、雲雀恭弥は"人斬り"や"盗み"などを働く仮面の浪人を追っていた。

その浪人は頼まれた仕事をこなす万屋で今流行りの尊王攘夷を掲げる者では無かった。

だからこそ雲雀が捕まえんとしている。

しかし情報は無に等しい。掴んだと思えば、霧のようにスルリスルリと手から抜けていく。少しばかりわかっているのは、般若の仮面であること、脱藩浪人であること、長身で美しいということなどだった。そして奴の活動時間は夜であることだ。


「チッ・・・正々堂々と出てこいよ。」
「恭さん、下田屋に盗みに入ると例の仮面から文があったそうです。」
「わかった。哲、そこを見張っといて。」
「はっ。」


ついにこの近くで盗みが入ると連絡があった。仮面の浪人は犯行予告を残す。彼が飼っている白い梟が運んで来るらしい。夜まではまだ何刻かある、雲雀は中庭に出ると刀で修業をすることにした。

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「・・・。」


ごそごそと音がする。


「何者だい・・・?」
「クフフ・・・君ならば聞かずともわかっているはずだ。」


雲雀が提灯で目の前の男の顔を照らした。


「"仮面の浪人"だね、御用だよ。」


雲雀はニヤリと口元だけで笑うと刀を抜いた。


「おや、自己紹介さえ終わっていないのに刀を抜くとは・・・無粋な方ですね。」
「ふふっ、罪人に名乗る名など無いよ。」
「ほぅ・・・だが僕は君を知っている。・・・雲雀、恭弥君?」
「貴様、」


仮面の浪人は素早く雲雀の後ろに回ると首元に刀を突き付けた。


「(は、速い・・・!)」
「さぁ、君の命は僕の手の中にある。・・・刀を置いて貰いましょうか。」
「殺せ。貴様に捕まるくらいなら死ぬ。」
「おや、負けを認めますか?つまらないです・・・ねっ!」


彼は雲雀の横腹に一発拳を入れた。くたりと呆気なく倒れた雲雀を彼は横抱きにしてその場を去った。

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「ん・・・」


雲雀が目覚めると見慣れない天井があった。


「お目覚めですか、恭さん。」
「哲・・・?」


雲雀は内心安堵した。部下の草壁がいるなら、己は悪い夢でも見ていたのだろうと。


「六道様、雲雀恭弥が目覚めました。」
「おや、ご苦労様です。草壁、君は下がっていてください。」
「はっ。」


しかし、その安堵はいとも簡単に打ち砕かれた。


「まさか、哲が・・・?」
「えぇ。彼は既に僕の配下だ。・・・クフフ、簡単でしたよ。少しばかり身体を好きなようにさせてやれば良い。・・・つまり、色仕掛けです。」


雲雀は起き上がって、背中を見せていた男--六道--に掴み掛かった。だが、拳は六道に受け止められて当たらなかった。


「単純なんですよ・・・ああ、刀でしたら預からせて頂きました。」
「・・・目的は・・・何なの・・・?」
「目的・・・ですか?"君"ですよ。今回は頼まれたのではなく僕の目的ですがね。」


振り向いた六道は噂に聞いた通り美しかった。しかし東洋人には見かけない顔立ちと色違いの目、髪色は藍色だった。


「自己紹介がまだでしたね・・・僕は、六道骸です。覚えておいて下さいね・・・君の新しい主人だ。」


自分のことを"主人"などとぬかした六道はいかにも貼付けたような胡散臭い笑みを浮かべた。


「最初から仕組まれてたの?」
「左様、下田屋の主人は僕の忠実な下僕であり、僕の活動資金を稼いでいます。そして、君のよく知る草壁も、僕に魅せられて主人を棄てた僕の下僕です。それに僕は君を手に入れるために、どんな手も尽くしてきた。」


六道が頼まれた仕事をこなしていたのも、人斬りになったのも雲雀を捕まえるための口実だったらしい。
気持ち悪い程の狂気な執着。雲雀は吐き気を覚えながらも、扉へと近づいた。


「僕は帰る。」
「逃がしませんよ。」


逃げようとする雲雀の腕を掴んで、六道は彼を床に投げ飛ばした。


「手荒な真似はしたくありませんが・・・この際仕方ありません・・・無理矢理にでも契りを交わしましょう。」


六道は起き上がろうとした雲雀を押し倒して上にのしかかった。雲雀の方が震える。いつもは強い意志の宿る瞳には明らかな恐怖と困惑の色が滲んでいる。


「な、何するの・・・!?」
「この状況でそれを聞くのですか?野暮な方だ。・・・これでもわかりませんか?」
「・・・っ!」


雲雀の黒い着物の中に冷たい手が侵入し、薄っぺらい胸を撫で回している。
流石の彼にもコレでわかったらしい。起き上がろうと必死になってもがいた。しかしそれはただ六道を煽るだけなのだが。


「や、やめ・・・」
「嫌です。」


六道の手が、雲雀の着物を脱がすのに取り掛かったとき襖の前に人影が現れた。


「骸様、お客様です。」
「チッ・・・わかりました、客間へ通して下さい。凪、雲雀を奥の部屋へ。出られないように見張っていなさい。」
「わかりました、骸様。」


現れたのは千種という男で、雲雀を連れて行くは凪という女。この屋敷にはいったい何人の下僕がいるのだろうかと、雲雀は考えた。なんとかしてここから出なければならない。でも、一端危機は回避出来た。


「雲雀様、こちらに。」
「・・・。」


小動物のようにか弱そうな凪に連れられて雲雀は部屋を出た。

奥の部屋は雲雀好みの座敷だった。真新しい畳の匂いがする。そして中庭には季節外れにも、満開の桜が咲き誇っていた。


「こ、れは・・・。」
「骸様が新たに用意なされた、雲雀様専用の部屋です。」
「桜は何故?」
「それは骸様に直接お聞きになってください。・・・骸様と同等にと仰せつかっておりますので、御用があればお呼び下さい。」
「うん。」


ここは大人しく従った方が良いのかもしれない。


その頃六道は、いきなりやって来た迷惑な古い知り合いを客間へ通していた。


「それで、なんの用です?獄寺隼人。」
「いや、雲雀とか言う男がここへ来たと聞いた。」
「それを確かめるためにわざわざここへ?」
「あ、ああ。山本から聞いてよ、雲雀は・・・俺の幼なじみなんだ。」
「ほぅ。」


現れたのは攘夷派の獄寺隼人。共通の、友人という名の情報屋、山本武を通じて知り合った男だ。いや、獄寺は山本と友人という関係でなく色のある関係なのだが。


「それで、会わせてくれ。」
「は?何を言います?」
「頼む!」
「・・・・・・では、報酬に山本からの情報を。」
「恩に着る。」
「ですが、今日は会わせられません・・・小鳥の羽は遠くへ飛ぶ前に手折らなければ。」


六道は顎に手をあて、横目に扉を見た。


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