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白い、白い、白い。


そんな空間に一人だけ異質な僕。足は無機質な白い手錠で鎖に繋がれている。


アイツが裏切った。


ジョットに聞かされたとき、僕は耳を疑った。僕は何も聞かされて無かったから。
そしてジョットは"もうアイツはお前の知るアイツじゃない""アイツを知り合いだと思うな"なんて言うけれど。
アイツは何時も通りに綺麗な顔で笑って(僕には出来ないよあんな顔)、僕の頬を撫でて、また笑って。
いや、こんなことを考えている場合じゃない。

まず何故僕はこのような状況にあるのか。

敵襲か・・・?

いやこの僕が・・・?




ありえない。




気配に気づかないなんて、寝ていたとしてもありえないだろう。


「!!」


そんなときアイツが僕には見えなかった扉を開いて入ってきた。


「デイ、モン・・・?」
「ああ、アラウディ。」


彼の顔に安堵が広がった。


嗚呼、助けに来てくれたんだね。


僕も安堵する。


「助けに、来てくれたの?」


彼は何も言わずに僕を抱きしめた。何時もの香水の香りと何時もの体温。落ち着いた。

だからかもしれない。僕はこのとき、彼がニヤリと笑ったことに気がつかなかった。


「鎖を外しましょう!」
「うん・・・!」


彼がありったけの力を込めて、鎖を断ち切ろうとした。僕も試した。けれど一向にちぎれる気配は無い。
彼の顔には焦りが浮かんでいる。


「すみま、せん・・・私はなんて無力なんでしょう・・・。」
「大丈夫、だよ。きっと続ければ、ちぎれる。」


俯いてしまった彼を慰めた。


「私のせいです。全て、私が悪いのです。」
「なんで君のせいなの?君は僕を助けに来てくれたんでしょ。それだけで僕は、その、嬉しい、よ。」


嗚呼恥ずかしい。

やはり慣れない言葉は言うもんじゃ無い。

僕は改めて感じた。


「そう、ですか・・・。」


一瞬、彼は何時もの笑顔を崩して、苦しそうな顔をした。


早く出たい。


「今、何時・・・?」
「すみません、生憎時計を忘れてしまいまして・・・。」
「そう。」


彼は何か買ってきます。と言い残して去っていった。




白いから気づかなかったが、よく目を凝らすとベッドやクローゼット、テーブル、椅子があった。でもやはり扉や窓の類は見つからない。どうしてこの部屋が明るいのかもわからない。
どうやら本当に僕は、この室内でただ異質なだけの存在らしかった。


僕は、ベッドに横になった。


もうこの白を見たいとは思わなかった。


おかしくなりそうだ。


もう何時間、いや何日ここで過ごしたかもわからない。あれ以来アイツも来ない。


「会いたい。」


無性にあの笑顔に会いたくなった。理由も聞かずに、ただただ抱きしめて欲しかった。


「アラウディ、」
「デイモン!」


走って行って抱き着いた。久々に僕以外の色を見た気がする。


「会いたかっ、た・・・。」


ぎゅうぎゅうと子供みたいに抱き着けば、彼はそっと僕を抱きかえしてくれた。


「珍しいですね・・・君が私に抱き着くなんて。」
「・・・駄目、かい?」
「いいえ、駄目じゃありませんよ。」


聞きたいことはたくさんあったけれど、今は彼の温もりを感じていたかった。








落ち着いた僕は、ベッドに腰掛けた彼の膝の上にいた。
捕まったのになんでここまで寛げるのかわからない。


「ねぇ、」
「どうしたんですか?"僕の"アラウディ。」
「君、さ、」


"裏切った"って本当かい?


頭を撫でていた彼の手が止まった。

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