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珍しく机に向かう。僕の仕事は任務が主流なのだ。デスクワークは基本クロームの仕事である。綱吉に頼まれた報告書。本来は彼自身が書くべきなのだが、イタリア語の読み書きが苦手な彼にはそれが出来ないらしいのである。


「チッ・・・きったない字ですね・・・。」


綱吉の手書きの字は中学生のときよりは幾分かマシではあるのだが、読みにくいことには変わりない。そもそも、デスクワークがあまり好きではないのだから余計イライラは募るばかりだ。


「骸様、コーヒーです。」
「ありがとう。」


コーヒーを煎れてくれたクロームに礼を言って再び机に向かう。最近買い替えたノートパソコンのキーボードをパタパタと叩いて汚いその字をイタリア語に翻訳していく。


「はぁ・・・。」


先程から漏れるのはキーボードを叩く音と大小様々なため息だけである。


そこにガチャリと違った音が響いた。


僕は視線だけをそちらに向けて眉間にシワを寄せた。


「骸、仕事はかどってる?」
「チッ・・・誰のせいでこのようなことをさせられてるかわかってるんですか?」
「ごめんなってば。」
「はぁ・・・まったく、字が汚い、文章が下手・・・一々僕に手間を掛けさせないで下さい。僕とて暇では無い。」
「や、俺ボスだし。」


なんの悪気も無いような綱吉にイライラは益々増大する。


「・・・はぁ、さっさと帰ってください。仕事の邪魔です。」


半ば無理矢理綱吉を追い出し、再び読みにくい彼の字と格闘する。


「・・・。」


コーヒーを一口飲んだところで、また扉は開かれた。僕はもう、そちら側に目を向けることさえ億劫で、結局は気にしないことにした。


どんな汚い字でも報告書とあれば当然長くもなる。まだ先が長い手書きのルーズリーフ上の文字には大ため息を吐きたい気分である。長時間のパソコン作業はやはり目が疲れる。先程のコーヒーに手を伸ばしたけれど大分温い。いつの間にか時間が経っていたらしい。


「ねぇ・・・」
「!?」
「ねぇってば・・・!ちょっとは・・・構って、よ。」
「・・・・・・!、恭弥!いつからそこに!?」


年齢に見合わない可愛らしい膨れっ面をした恭弥はいつの間に居たのかわからない。いや、先程の二度目のドアの音のときに入って来たのかもしれないが・・・。


「さっきから何回も話し掛けたのに。」


まったく聞こえて居なかった。


「綱吉のは聞こえてたくせに僕の声は聞こえないって言うの?」
「・・・もしかして、妬いてます?」
「っるさい、悪いのかい!?」
「悪くないです。」


どうして君はそんなに可愛いんだろうか。

よし、デスクワークでもなんでもやってやろうじゃないか!


そんなふうに考えながらすっかり温くなったコーヒーを啜った。


(僕のやる気スイッチは君だけ)



2011.1.1をオールで迎えた管理人は夜中のテンションを引きずっている模様


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