「あれ、名前じゃん。なんだ、お前も来てたんだ」
「えっ」
懐かしい声に目を瞬かせる。だけど見慣れたあの人はいなくて、変わりに目の前には。
「え?チェイニー…?」
いや、見慣れたその人ではある。あるけど、なんだろう。すごく不思議な格好をしてる。感動の再会のはずなのに、すっごく気が抜ける。
「正解
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「面白いっていうか…似合っては、いる、よ?」
なんだかとっても道化師っぽい。でもこの世界では、偉い人が兎の耳をつけてみたり水着になったり不思議な格好をすることが結構多い。だからチェイニーの格好も、そんなに…奇抜ではない、と思う。
「すごいね。目のとこのお化粧も自分でするの?」
「ん?さぁどうだろうな。俺もさっき来たばっかだし」
二股にわかれた帽子の先にはカボチャのモチーフがついている。それを指先で弾いてはプラプラ揺らして遊ぶチェイニー。いろんな装飾がついてるのに全然鬱陶しくない、それすらも似合ってるって思うのはやっぱり私がチェイニーを好きだから、かな。そんなことを考えてると少し気恥ずかしくなって慌てて意識を切り替える。
「どした?」
「な、なんでもない!」
パッと顔をあげた瞬間、ばっちりと目があってしまった。顔が赤くなってないといいけど。
「ふーん…ま、この格好で口説いても決まらないしな」
少し考える素振りをして呟いた後、チェイニーはなにか企んでそうな悪い顔でにやりと笑った。え、何その笑顔。
「なぁ名前。ここは大人しくイタズラすべきだよな」
「え?あ、お、お菓子…!」
ハロウィンは、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!って定石のイベントだってアンナさんが言ってた!イタズラされる前にお菓子を探そうとするけど当然そんなものを持っているはずなく。
「大丈夫だって。お菓子あっても俺、お前にはイタズラするし」
「え、全然大丈夫じゃない、」
だってイタズラって絶対健全なやつじゃないし!人前で昼間っからしちゃいけないようなやつだ絶対!私の第六感がそう告げてるから慌てて逃げようと踵を返したけど、すでに遅かった。
「はは。俺が名前を逃すわけないだろ?」
後ろからぎゅうと抱きしめられて捕獲される。耳元で囁かれた言葉も、楽しげな声も。全部が全部ときめいてしまって私は抵抗するのを諦めた。
END