あゝ愛しの軍師さま

こんなはずじゃない。私が夢見ていた未来はこんなんじゃあなかった。

「……」

「…そんな顔で僕を見ても何も出てこないよ」

「納得いかない…」

「…君はギムレーに何を求めていたんだい…」

「うるさいですよっ!でもでも酷くないですか!?ぶちかましするのにわざわざ足蹴にします!?」

いくら私のことを覚えていなくてその他諸々と同じ虫けら扱いだったとしても!

「しかも赤剣士の目の前にですよ!?訓練じゃなかったら死んでます…」

「まぁギムレーだからね…」

それを言われると返すと言葉もない。別にお姫様抱っこで放り投げてほしいとか、そんな願望があったわけじゃないし仲良しクラブのお仲間ごっこしたかったわけでもないけれど。

「あーあ…」

大きな溜め息と一緒に落胆の声を零せば目の前のギムレー様(仮)はちらりとこちらを見たけれど何も言わなかった。何の本を読んでいるんだろう。私がこんなに落ち込んでいるっていうのに!

「ねぇねぇどう思います?どうしたら…」

どうしたらギムレー様は私に優しくしてくれるのか、その策を授けてもらおうかと思ったところでふと閃いた。私、天才かもしれない。

「じゃーん!どうです、ギムレー様の完成です!」

ギムレー様(仮)のいつもは被っていないフードをぐいっと被せてみる。なんとなく、顔に影ができていい感じ?と、思ったけれど、アレ?

「どうしました?」

思い切り顔を逸らされてしまった。そんなに嫌だった?疑問に思いつつ首を傾げて見守っていると、やっとこちらを向いてくれた。けれど、今度は片手で顔を覆ってしまった。どうしたっていうの一体全体。

「君って本当…」

「…なんです?」

何を言われるのかまったく見当がつかず、ただひたすら次の言葉を待つ。フードの影から覗く色素の薄いアンバーの瞳。本来のギムレー様とは違う、透明感があって綺麗なその瞳を好きだなぁ、なんてぼんやり思う。そこに写っている私は、どんな私なんだろう。漠然と、彼の瞳に写る私を見たい、という欲求が生まれる。

「〜っ!?ちょ、ちょっと待って!さすがに近い!」

「え、」

もっと近くで、と思ったら無意識に身体が動いていたらしい。肩を掴んで引き離されたけれど、思ったより近い距離を実感して一瞬でキャパオーバー。

「な、何するんですか!ルフレさんの癖にっ!」

ガバッと腕を振り払って走り去ったその後で。

「それはこっちのセリフなんだけど…しかもそこで名前とか、反則だろ…」

頭を抱えてしばらく使い物にならなかった軍師の姿があったなんて、私は知るはずもなかった。




END


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