召喚士から呼ばれてこの世界に来たとき。これまで生きてきた世界とは似て異なるものがあって、慣れるまで戸惑うこともあった。そんな日々にもようやく馴染んだと思っていた矢先だった。
「ギムレー様っ!今日はお日柄もよく絶好の世紀末日和ですねっ」
にこにこ笑顔で可愛らしく声を掛けてくれるのだか、どうにもその中身がよろしくない。
「名前…何度も言うようだけど、僕の名前はルフレであってギムレーじゃない。君も大概しつこいな」
「あら、つれないこと言わないでくださいよ〜」
どんなに冷たく突き放してもめげない姿はむしろ尊敬する。するけれど、好ましいとは思わない。戦友の子どもたちを苦しめた元凶の素養が自分にある、というだけでも受け入れ難いのにアレの名前で呼ばれるなんて堪ったもんじゃない。
「大体、ギムレーならあそこにいるじゃないか」
指差したのは自分とよく似た雰囲気の、けれど絶対的に異なる存在。同じ髪色で同じ名前。
「えぇ?だってあれは女型じゃないですか。私、女性に興味はないんです」
「…その理屈でいくと、君はギムレーに男性として興味があるように聞こえるけど」
ぼそりと、ほとんど呟くような声の疑問は独り言のつもりだった。
「気になります?」
それを拾ったらしい彼女はニコリともニヤリとも言えない笑みを浮かべている。
「…それより、君はなぜそこまでギムレーに固執する?奴を知っているのか」
部が悪いなと話を逸らしたがそれもあからさまか。けれど彼女は一瞬だけキョトン、として。
「それは、秘密です」
人差し指を顔の前で立てたままのポージングでそう宣った。
「それ、誰のマネ?」
「さっすが〜よく分かりましたね!」
まぁ、あれだけドヤ顔されたら誰だって分かりそうなものだけど。
END