「単刀直入に聞く。あんたは俺と結婚する意思があるのか」
「いや?ない、です、ね」
「…そうか、わかった」
去っていくアイクさんの姿を眺めながらも、頭の中はハテナで埋め尽くされている。いきなり呼び出されて何だろうとは思ったけれど、これは予想外過ぎる。全くもって意味不明。こういう時はアレだ。
「エクラさんに相談しよう…」
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「英雄が不審な言動?よく分からないけども、具体的には?」
「不審な言動っていうとちょっと言い方が悪いかもしれませんけど…例えば、好きでもない人に結婚の話をしてみたりとか?」
「結婚?君、誰かにプロポーズでもされたのか?」
「いや、プロポーズというか…」
プロポーズ以前に結婚することがそもそも前提、みたいな彼の話ぶりを考えると、やはりプロポーズとは少し違う気がする。とは言えどう説明したものか。
「まぁ、なんというか脈絡のない好意というか…」
「あぁ…でもまぁ、恋愛なんてそんなものじゃないか?両想いでもなけりゃ一方通行なわけだから、片方からすれば寝耳に水、みたいなこともあるだろ」
それもそうか。なんでこんな話してるんだ、と頭を抱えているエクラさんを横目にすっきりはしないものの何とか自分を納得させる。こんなこともある、ということだ。
とは言えど。
「あんたが今日の食事当番か」
「え!?あ、まぁそんな感じです…」
本人は全然気にしてないかもしれないけれど、こちらとしては当然意識してしまうわけで。食事の準備に必要な道具を揃えているところへやってきたアイクさんを相手にするのは若干、いやかなり気まずい。
「邪魔するつもりはない。見ていていいか」
「え?あー…まぁそれは全然大丈夫ですけど…」
何のための見学なんだこれは。今さら監視ってわけでもないだろうし。まぁ食事の準備なんて特に面白いわけでもないし、アイクさんもそのうち飽きてどこか行くだろう。
「……」
飽きてどこかいくだろうなんて思っていた自分が甘かった。激甘だった。アイクさんが飽きる前にこっちがなんか疲れてしまう。
「あの、すみません…やっぱり見られるとちょっと気になるので…えっと、準備ができたらお知らせするので」
「あんたが呼びにきてくれるのか」
「いや、それは分からないですけど…」
「そうか」
うう、気まずい。気まずいと思っているのを察してくれたのか、アイクさんはそれ以上何も言わずに去っていった。
食事の準備ができて食べ始めた人もちらほらいる中で、アイクさんが未だ来ないことに若干不安を覚えつつ、まぁそのうち来るだろうと決めてひとまず自分の食欲を満たすことにした。
END