解を模索する

「名前、食事の準備ができたよ」

「……」

「名前?」

声が聞こえていないわけではないだろうに、あからさまに無視された。感情が表に出やすいのは彼女の可愛らしいところではあるが、今のはちょっといただけない。

「何を怒ってるんだい」

「……」

めげずに再び声をかけてみるが、どうもダメらしい。とはいえ、思い当たる節がないというのは致命的だ。名前が不機嫌になるような出来事が何かあっただろうか。自惚れではなくて、それはおそらく自分にまつわるものなのだろうけれど。と、そこまで頭を巡らせるがこれは根比べになるな、となんとなく予測して戦術書を開く。もちろん、そんなもの開いたところでまったく頭には入らないし考えるのは名前のことばかりなので意味はないのだが。

「…仲良いよね、クロムさんの妹と」

しばらくして漸く口を開いたかと思えば出てきたのはそんな言葉で。仏頂面なのは相変わらずで、こちらを見ようともしない彼女の真意が見えずに続きを待つ。

「まぁ否定はしないけど…」

「以前お付き合いとかしてたのかなぁって」

「はぁ?リズと?」

お付き合いしてたって、過去形ってことは付き合って別れたとかともかく結婚はしてないってことだろう。半身であるクロムの妹と?えええ何だそれ気まずいに決まってる。というか怖い。名前の発想が怖い。
ありえない、とばかりに首を振って否定する。でもそれでなんとなく名前の不機嫌の理由がわかった気がする。元の世界の仲間と親しくするのが嫌らしい。自分だってエクラと元の世界の話題で盛り上がることがあるのに、と思わないでもないけれど格好悪いからそんな子どもみたいなこと意地でも言えない。原因が分かったものの、さぁこの場合の最適解は何なのか。

「名前」

名前を呼んでもまだ、彼女はそっぽ向いたまま。強硬策、とばかりに横から彼女の肩に手を回し額をこめかみにくっつけて囁く。

「いい加減にしないと、このままここでキスしちゃうよ?」

面白いほどびくりと肩を震わせて振り返った名前とようやく目があう、のだけれど。

「できるもんならすればいいでしょっ…」

ときたもんだ。これはまたいつになく強情娘になってはいるけど、それはそれで好都合。

「そう?じゃあ遠慮なく」

「っ!?」

まさか本当にするなんて思わなかったのだろう、驚いていたけれどもう遅い。言質も取れているこの状況を逃すわけはない。名前の唇をたっぷり味わい、少しぐったりしている彼女と向き合う。

「食事の前にこのまま君を食べちゃってもいいけど、どうする?」

「ご飯食べます…」

「素直でよろしい」

名前の機嫌が直ったのかはよく分からないけれど、結果良ければすべてよしってことにしとこう。



END


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