「チェイニー!」
血が、流れている。私と同じ赤い血。けれど彼に流れている血は竜人族の血で、私たち人間よりずっと長生きなのだと、そう教えてくれた。
「どうしよう血が…止まらない…」
みんながみんな目の前の敵に応戦するので手一杯なのだ。
「どうしよう、誰か…」
「名前、もう、いいから…」
辺りを見渡しても誰も助けてくれる人はいない。かといって自分に何かできる筈もない。もういい、なんて言う言葉は放っておいて何とかしないと。でなければ手遅れになってしまう。
「待ってて、誰か助けてくれる人を呼んでくるから…!」
「いいって、それより…側にいてくれ…」
嫌だ。だってそんなことしたら、それはもう手遅れなんだって認めてしまうことになる。彼はもう助からないんだって。
でも。
「ごめんな…ずっと一緒にいられなくて」
この言葉を、彼から聞くことになるだなんて思ってもみなかった。いつだって、私の方が先に死んでしまうんだとそう思っていたから。いつだって、描いていた未来には程遠い現実を突きつけられる。
彼のいない世界で生きていかなければならない現実を。
END
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bkm