黒い牙底上げ戦略法
【四牙】の一人、白狼と呼ばれるのはリーダス兄弟の兄、ロイドだ。まぁ、オレも【疾風】なんて二つ名が付いていたりはするが、力の差は歴然。そもそも、計る力の方向性が異なるのだから比べること自体が間違っている。

「どうした【疾風】?お前の力はこんなもんじゃないだろう」

「はっ、それはどうだかねっ」

風を切って振り下ろされる刃を見極めて直前で避ける。自慢じゃないが、あの剣をまともに食らったら…いや、受け止められるだろうが受けたいとは思わない。弟のライナスほどではないにしろ、物量的な差は明確。さっさとこの狂犬染みた【白狼】を元に戻す救世主が現れないものか。まぁ、その原因も彼女ではあったりするんだが…。




「また後でね!」

弾むような声とともに振られた手が、誰に向けられたものなのか。そんなちっぽけなことで、――そこいらの賊を黙らせることなんて造作もない、この【白狼】などと呼ばれている男は機嫌が悪い。
そしてまた運が悪いことに、この場に居合わせてしまったオレ。あともう少しタイミングがずれてヤツが一人の時だったらどれほどよかったか。

「なぁ【疾風】よ」

間近に不穏な空気をびしびしと感じながら、さて、この場をどうやって乗り切ろうかねぇ。

「少し、俺の相手をしてくれないか」

前言撤回。乗り切る乗り切らないの問題じゃなかったようだ――…。




さて、そろそろ体力と集中力が限界に近付いてきてやばい、と感じた時だった。

「っ!?」

ロイドの動きがぴたりと止まり振り返った。

「名前?どうかしたのか?」

先程までの覇気とその他諸々は一体どこへ行ったのかと突っ込みたくなるような柔らかい声が響く。声と同じぐらい優しい顔をしているんだろうと想像できて何となくしょっぱい気持ちになるが、まぁ、助かった。

「武具と食料の補充が終わったから、報告しようと思ったんだけど…二人ともすごい気迫だったから圧倒されちゃった」

ふんわりとした表情からにわかに照れた笑顔を浮かべる名前は、確かに可愛いなと思う。【狂犬】が忠犬になったり【白狼】の牙を丸めてしまう程とは思わなかったが。

「身体が冷えてるな。いつからここに居たんだ?」

「えっ、と…」

然り気無く肩を掴んで距離を縮める手腕はさすがと言うか、なんと言うか。まぁ、ともあれロイドからさっさと失せろという聞こえない指示が鬱陶しいので退散するとしよう。
そう思えば【疾風】のオレとしては姿を眩ますことに関しては腕が上がった気がする。名前の影響を受けているのはリーダス兄弟だけじゃないってことか。



END



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