君の香りに包まれていたい
フレデリクさんに借りたイーリスの年表を見ていたら、ふと影が射した。

「名前さん、お疲れ様です」

「あ、ロラン。お疲れ様…って、その手は何?」

いつもの見回りの最中なのか、彼はこちらに向かって真っ直ぐと手を差し出している。何なの、一体。

「洗濯物をお預かりしようかと」


「え、いやでも今持ってないし…」

彼の口から出た言葉があまりにも予想外だったからつい反応が遅れた。今日は洗濯当番なのだろうか。そう考えているとどことなく、ロランの表情が堅くなった気がする。えぇ、いまのどこに機嫌を害する要素があったっていうの。

「そのストール、いつ洗いました?」

「は?」

「僕の把握している限り、3日以上は同じものをつけていますよね」

「いや、ずっと着けてるわけじゃないし…っていうか洗う時は自分でちゃんと洗うし、お願いしたとしても持っていくけど」

っていうか何でそんなこと知ってるの君は。いや、でもまぁみんなの様子を見て回って把握するのが自分の仕事とかいうぐらいだからな。彼の中では普通なのかもしれない。

「そうですか、ではいつ洗う予定ですか?」

う、ウワァなんだこれ面倒くさい。これはさっさと方針を変えて諦めた方がいいかもしれない。

「い、いやぁ近いうちにとは思ってたけど、せっかくだしお願い…するわ、うん」

「そうですか、それは良かった」

多分、悪気はないんだろうな。お願いすると途端に表情変わってキラキラし始めたし。だから断れないし強く出れないっていうのもあるんだけど。

「じゃあこれ、お願いします」

「はい、……何だか名前さんのいい匂いがしますね」

「そ、ソウデスカ…」

言動がいちいち変態臭いのは何とかならないものか。ンンの言ってたロリコン云々もあながち間違いじゃないのかもしれない。



END




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