「うっしゃ!ボーナス入ったぜー」
仕事終わりの帰り道、銀行でボーナスが振り込まれていることをチェック。明細もらってるけど、一応ね。
マシューの使う日常品を買うためにお金を引いておく。その足で買い物に行っても良かったけど、やっぱりマシューと買い物行ってみたいし、とりあえず帰宅。
「ただいまハニー!私がいない間寂しくて泣いたりしてなかったかな!」
「お前、毎回飽きないよなぁ本当」
「お褒めにあずかり光栄の至り、なんちって」
優雅に見よう見まねでお辞儀をしたら笑われた。ま、オスティアの密偵とかしてたら本物の振る舞いを生で見ることも多いから当然か。
いやいや、そんなことより…
「明日、買い物に行くから」
「…?ん、了解」
「いやいや、もちろん君も行くんだからね!」
「何で俺が?」
「そりゃ、マシューの服その他諸々買いに行くんだもん。当人が行かなきゃねぇ」
なんて、もちろんそんなのは建前で本音はただマシューとデートしたいだけなんだけどね!
そしてやってきたデパートで予想外の出来事が起こった。
「あれっ、お疲れ様…って、彼氏?」
私としたことが超うっかりしてた。まさか出先で職場の人間に出くわすとは…!
こ、これはマシューの服装以前に…髪ー!つか顔ー!
「彼氏、名前なんて言うの?」
「ちょ、お前マシューをナンパすんな!」
「ましゅう…?それ、本名?」
しまったァァァァ!私のバカ!墓穴掘ってどうする!
「いや、ははまさか!なんかね、摩周湖が好きらしくてさ、すっごい詳しいんだって!だから摩周湖マニアで略してマシューってあだ名がついたらしいよ!ねっ」
くっ、我ながら酷い言い訳だとは思うけども仕方ない。言ったもん勝ちや!
「…アホなこと言ってないでさっさと次行くぞ」
「え?あ、うん…それじゃ」
溜め息とともに吐き出されたマシューの言葉にナイスタイミング!とか思ったのも一瞬で、さりげなく肩から腰に回された腕のお陰で自分の体温が一気に上昇した気がする。気がするというか、確実に上昇したな、こりゃ。
お幸せにー、なんて言ってにやにやしている同僚がうぜぇ。くっそーなんで私がアイツにあんな目で見られないといけないんだ…!と、言うかその前に。
「…い、いつまでこうしてんの?」
そう、マシューはいまだに私の腰に腕を回したままで歩いている。こ、これってどんだけ密着してんだ!
「別にいいだろ?減るもんじゃねぇし」
へ、減るよ!私のライフゲージは減る!
両手が手持ちぶさたになるから、抱えていた鞄で思わず顔を隠した。
「……お前さ」
「…何でしょう」
「人に触るのはよくても、触られるのは耐性ないんだろ?」
「……………………」
ば、バレてる…!?さすが密偵。観察眼に長けているというかなんというか。
いやいや、いまはそんなことに感心してる場合じゃなくて…!
「意外と可愛いとこあるんだな」
耳元でそう囁かれて、私はまた全身の体温が上がるのを感じた。
ご利用は計画的に
(うう、マシューにあんなことされるなんて予想外過ぎる…)
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