ノン・ストップ!
敵の不意打ちを避けきれずに負った怪我が思いの外深くて、暫く療養しなさいと言われ絶対安静中なのだけど。ひたすら横になっているだけ、というのはとんでもなく暇なのだ。
だから、誰か遊びに来てくれたらな、とは思っていた。思ってはいたのだが。

「あ、今日は起きてるんですね名前。おはようございます」

「…おはよう」

入りますよの声もなく入ってきたトーマスを一瞥して目を逸らす。彼がここを訪れるようになって今日が三日目だ。初日はもう少し遅い時間帯だったけれど、昨日は結構早くてまだわたしはのんびりと惰眠を貪っていたのだ。だから今日は早めに起きて撃退してやろうと少しばかり気合いをいれていた。

「何、それ」

「え、あぁ、鉢植えですよ。何とかっていう綺麗な花が咲くって聞いて。花束にしたかったんですけど萎れたら勿体ないですし…緑があると名前の気持ちも明るくなるかなって」

「そ、すか」

名前、カウンターを食らってあえなく撃沈。って、そうじゃなくて。もし仮に元気がなかったとしたら朝から晩まで入り浸っているトーマスに辟易して、という原因が明らかなのだからさっさと追い返さなくては。

「トーマスさ、」

「あ、それから今日は差し入れ持ってきたんですよ!ほらこれ美味しそうでしょ?南国の暖かい土地でしか採れない果実らしいです」

負けるな名前!美味しそうな果物も、綺麗な花を咲かせる鉢植えも嬉しいけどきっとトーマスも負担だろう。多分、いや絶対に!もうこの線で押しきるしかない。

「あ、うん…ありがとう。でもなんかちょっと申し訳ないんだけど、なぁ〜。忙しいのに毎日来るのも大変だろうし」

「いえいえ、名前が早く元気になるまではちゃんと来ますからご心配なく」

「え?いやだってほら、軍としての仕事もあるじゃん。わたしばっかりに時間つかうのも、ねぇ?訓練もしとかないとわたしみたいな目に遇うかもよ?」

わたしの見舞いにきてたせいで訓練が疎かになってました、なんて笑えない。しかもそれが原因で怪我でもされたら目も当てられない。

「訓練…そうですね、じゃあこうしましょう」

鉢植えを窓際に置いて思案していた彼は、ポンと古典的なポーズで手をたたいて徐に近付いてくる。

「身体を動かさないといけないのは名前も同じ。なら一緒にすればいいですよね」

「は?」

仰っている意味が分からない。と突っ込みをいれる前にベッドに腰掛けたトーマスが覆い被さってくる。

「ちょ、ちょっと待ってわたし怪我人なんだけど?」

「大丈夫ですよ、優しくゆっくり丁寧にしますから」

それって健全な意味合いではないよね絶対!?ちょっ、誰か、衛生兵ー!



END


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