隣り合っては死に至る
「……んん、」

「っ!!」

すぐ近くで聞こえた小さな呻き声に思わず身体がビクリと反応した。ドクドク脈打つ心臓が煩い。全身の筋肉が緊張して次の瞬間をじっと待つ。
けれど、それ以降は何も動きはなくてホッと息をつく。そして私は考えた。どうしてこうなった、ってね。




思い起こすこと数時間前、このよく分からない居候を受け入れたことがすべての始まりだった。
とりあえず一緒にご飯を食べて、私がお風呂に行っている間のこと。退屈しないようにと思って点けっぱなしにしていたテレビに、彼は釘付けになっていた。

『……すね。最期のときに間に合ってよかった、心からそう思います。ただ、自分がもう少し素直だったら…勇気をもつことができていたなら…もっと早く、もっと長く一緒にいられたのに…今さら、悔やんでも仕方ないんですけど』

何かのドキュメンタリーで、生き別れの親子が再会した、そんな内容らしい。集中して見てるようだから、ドライヤーは別の部屋でした方がいいのかな。いや、でも何か声掛けた方がいい、のかな。

「…彼は、間に合ったんですね」

「ん?」

ぽつり、呟かれた声は私に、というよりかはほとんど独り言みたいに聞こえた。それ以上は何も言わずにじっとテレビの画面を見つめている。
なんとなく気まずくて、でも会話するような雰囲気にもならない無言の時間。私は彼の動向を気にするのを止めて風呂上がりの一杯を頂くことにした。プシッといい音をさせてプルタブを空け口に含めば、なんとも言えない美味!やっぱり風呂上がりの一杯はビールに限る。二十歳になりたての頃は美味しいとは思わなかったけど、社会人歴も数年経てば味覚も若干変わるらしい。

そのまま勢いよく一缶空けて…。
そうだ、その間の記憶がイマイチおぼろげでいけない。ビールを飲んでアルコールが入ったおかげで少し気が大きくなって…どういうわけだか、ひとつのベッドに二人で寝ているという不可思議な事態。
そろりっと目を開けると、状況は全く変わってなくてお互いが向かい合って横になっている。いやでも、やっぱり、この状況は落ち着かない。眠れない。かといってベッドを譲る気もないし、蹴落とすなんて恐ろしいことができるハズもない。だから私はそっと、できるだけ自然な寝返りの動作で方向転換を試みた、ら。

「駄目、です…」

「っ!?」

後ろからニュッと伸びてきた腕に捕まった。捕まった、というよりむしろアレだ。抱き締められているっていう表現の方が正確。ぴったりくっついた身体はそれ以上どうするわけでもなくその位置で留まっている。
またしても心臓がバクバクと煩かったんだけど、しばらくするとそれも落ち着いてきた。こんなことで今晩眠れるのか非常に怪しいわけだけれど…というより、これから先がとんでもなく不安なんだけど大丈夫ですか、私。



(隣り合っては死に至る)
心拍数毎分150が頻回に続いたらマズイ気がするんだ。





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