今から5ターンずっと灰色
うおっ、何か緊張するな。仲間を後ろから襲うのって緊張する。しかも相手はゴードンさんだし。
え、なんでそんなことしてるのかって?そりゃもちろん、ゴードンさんのために決まってる。まず、気づかれちゃ話にならないからそうっと近づくわけ。抜き足差し足忍び足…ってね。私、盗賊になれるかも。
お、標的発見。ぴん、と背筋を張って何かを見ている。ま、何でもいいや。何かに集中しているのはこちらにとっても都合がいい。そろりそろり、息を殺して近づく。やば、どうしてだかこう、笑っちゃいけない場面って余計に笑いたくなるのってなんでだろう。私はいま完全にその状態なんだけど、ぐっと息を止めて堪えた。危ない。そしてようやく目標地点…ゴードンさんの真後ろ、手を伸ばせば届く位置までやってきた。よし、ジョルジュ隊長、作戦を決行します!(「よし、やれ」という号令が頭の中で聞こえた気がした)

「うりゃっ」

「うひゃ!?な、なっ、名前!?」

防具と防具の間、柔らかい布地の下は恐らく素肌、というジョルジュ隊長曰く絶好の急所、わき腹をとすっと突いてやった。うん、隊長の仰る通りイイ反応だ。ばっと振り返ると同時にちゃんとわき腹を保護するように手で隠しちゃってまぁ、不意打ちが大事だからもうしないのに。

「あはは、ゴードンさん顔真っ赤」

「っ!!…そ、それは君がいきなりわき腹なんて触るからだろ!」

「えー?でも戦場に居るときはいつ誰にわき腹を狙われるか分かりませんよ?」

そう指摘してやれば思い当たる節があったのかハッとして、がっくりと項垂れてしまった。え、そんなにショック受けるようなこと?

「……ジョルジュさんの仕業か」

「お、さすがですね。お察しの通りジョルジュ隊長の依頼です。因みに言伝も」

「言伝?」

「はい。えーと、何だっけ。あ、油断してると出し抜かれるぞって言ってました」

「う、」

ここへ来る前にジョルジュ隊長と話したことを思い出しながらそのまま口にする。何のことだかさっぱりだったけど、ゴードンさんにはちゃんと伝わっているようでぴくぴくと頬を引きつらせていた。まぁ、確かにこの話してたときのジョルジュ隊長、何か雰囲気違ってたし。明らかに悪いこと企んでます、っていう顔してたというか、真っ黒いオーラみたいなものがもわもわと出ていた気がする。

「それと、お前が最も注意しなければならないのはこの俺だ、とも言ってましたけど…何したんですかゴードンさん」

「あ、あの人は本当にもう…!!」

顔を赤くしたり青くしたり、意外と器用なゴードンさんは頭を抱えて蹲ってしまった。何したんだ、一体。とにかくこのままじゃ敵に襲われても一撃で天に召されそうなゴードンさんを放っておける筈もなく私はしばらく待機することにした。もちろん、ゴードンさんの隣で。





(今から5ターンずっと灰色)



END


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