軍師の私が暇なのは、イコール戦がないってことだから悪いことではない。ないんだけれども。
辺りを見渡せば、皆が思い思いの形で憩いの一時を楽しんでいる。気持ちの切り替えが早い人たちは強いんだろうなぁとぼんやり思う。
あれ、強いから気持ちの切り替えが早いんだろうか。
「まぁ、いっか」
そのどちらにも自分はなれないのだから、考えるだけ時間を無駄にする気がした。
「何がいいんだ?」
後ろから突然、声が聞こえて。そちらを振り向けば、サカの少年が立っていた。
名前は確か。
「ギィ、」
扉が軋む時の効果音みたいだなぁと思った記憶が懐かしい。
ギィは相変わらず腕組みをしたまま突っ立っている。
心なしか不機嫌そうだけれど、原因は特に思い当たらない。
座れば、と促せば何か言いたそうにしたけれど結局隣に腰を降ろした。
「何がいいんだよ?」
しばらく黙っていた彼は、もう一度同じ質問をした。その表情はやっぱりちょっとムスッとしていて、なんだか可愛いくて笑ってしまった。
「な、何笑ってんだよ!」
「あはは、ごめん、可愛いなと思ってついね」
そんなにたいして面白い訳じゃないのに、一度笑い出したらなかなか止まらない。
だけど。
「人がせっかく心配してやったのに…」
「え?」
小さく聞こえたギィの呟きが予想外だったから、ようやく笑いがおさまった。
「心配、してくれてた?」
「…名前が、またどうでもいいやって気持ちになってんじゃないかって。さっきの、そんな声だった」
顔はそっぽ向けたまま、ズバリ私の心中を言い当てる。そんな、人の心に敏い少年だっただろうか。
「いつの間にそんな読心術身に付けてたの?」
「どくしんじゅつ?」
「うん。なんで私の考えてること分かったのかなぁと思って」
「別に…いつも見てれば分かるだろ、それぐらい」
とんでもない殺し文句をさらりと言い放って、この少年、本当にもう。
「確信犯?」
「は?何が?」
「なんでもなーい」
赤くなった顔を誤魔化すように、わざと間延びした声で返す。
自分だけ意識してるのも何だか悔しいから、仕返しとばかりにギィの肩に寄りかかった。
「っ!?」
ビクッと分かりやす過ぎる反応を示して、けれど退かそうとはしないから私はそのまま全身の力を抜いた。
隣接治癒効果
あぁ本当、癒される。
END