決行!プリン大作戦
いつも作ってくれてるから、たまには私が作ってあげたいんだよね!





(決行!プリン大作戦)





「譲ー?」

梶原邸の台所を覗けばやっぱりというかなんというか、もうすっかりお馴染みとなっている譲の後ろ姿。晩ご飯の仕込みでもしてんのか、こいつは。どんだけみんなのオカン体質なのよ!なんて心の中で叫びながらひょこっと譲の背後から顔を見上げた。

「譲?聞こえてる?」

「わっ!?名前さん!急にびっくりさせないでください!」

「急じゃないし。さっき呼んだよ?誰かさんにはスルーされたけど?」

つん、と嫌みったらしく言えば眉を下げて困った顔。あはは、可愛い。だけど今回は譲のこの顔が見たかったわけじゃない。

「ま、それはいいけど。弁慶さんが呼んでたよ?なんか、現代での薬とか医療について訊きたいんだってさ」

「弁慶さんが、ですか?」

「うん、もう終わりそう?」

「そう、ですね・・・後はもうこれを片付けたらすぐ行けます」

「あ、じゃあそれ私がやっとく」

「え?」

ちょ、そんなに驚くことじゃないと思うんだけど?目をまん丸にして心底意外そうに見つめるもんだからさすがにちょっと気まずい。まぁ、そりゃあ確かに片付けとか掃除とか手伝わないけどさぁ!

「・・・知ってるでしょ、弁慶さんに逆らえないの。私があとやっとくからさっさと行ってきなよ」

「・・・分かりました」

あの黒頭巾、本当裏で何考えてんだかわかりゃしないんだから。逆らわない方が賢明だってことはみんな知ってるはずだ。まぁ・・・それと知っててびくびくしてる人間もそんなにいないんだろうけど。

「さてと、そろそろ始めますか」

譲の姿が見えなくなったのを確認して手早く作業に取りかかる。弁慶さんには口裏合わせて貰えるよう話しといたから大丈夫だと思うけど。大きめの器にさっき鶏小屋からとってきた卵を割り入れてほぐす。そこに牛乳と、この時代では貴重らしい砂糖を入れて混ぜ合わせる。小さめのお鍋に入れて、お湯を張った大鍋に卵液を入れた小鍋を入れて火にかける。後は火加減を確認しながらほどよい柔らかさを見極めるだけだ。
それにしても面倒だなぁ。現代だったらレンジでチンすりゃ一発なのに。まぁ、今のうちに洗い物とか片付けを全部終わらせて、と。できたても温かくてふわふわでおいしいけど、やっぱり冷たい方がおいしいよね。と、言うわけで朔ー!

裏庭でこっそり朔に月影氷刃を連発してもらったおかげで、完成したプリンはキンキンに冷えた。冷凍庫より強力なんてさすが!

「譲!」

「名前さん」

譲の見えない位置に小鍋を隠して名前を呼べば、すぐに気がついてくれる。弁慶さんも察してくれたのか譲と一言二言話したあとどこかへ立ち去ってくれた。あの顔はあとで結果報告に来いよって顔してた、絶対。

「どうしたんですか?ニヤニヤして」

「うっさいな。いいからコレ、ちょっと食べてみて」

「・・・これ、名前さんが?」

「そっ!名前スペシャル!まぁ、見た目は譲が作った時の方がおいしそうだけどさ、たぶん味はおいしいよ」

じゃじゃーん、なんて自分で効果音をつけながら小鍋の蓋をぱかっと開けて譲の前に差し出す。やっぱり綺麗な器に盛りつけした方が見栄えは良かったかも。

「・・・えっと、本当に僕が頂いてもいいんですね?・・・・・・いただきます」

え、何その間は。若干気になったけど、それをいちいち突っ込むのも何だからぐっと堪えて譲が一口目を食べ終わるのをじっと見つめる。

「どう?」

「おいしい、です」

「でしょー!?」

意外そうにぽつりと呟くのが心外のような、してやったりのような、でもやっぱりおいしいって言われたら嬉しい。

「どうして、ですか?」

「ん?」

「いえ・・・どうして急にプリンなんて作ってくれる気になったのかと思って」

「んー、何となく、かな!」

笑って曖昧に誤魔化せば譲も納得はしてないみたいだけど、それ以上突っ込んで訊いてこなかった。ただ単に私が譲に何か作ってあげたかっただけ、なんて言える訳がない!




END


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