どこぞの誰かとドライブ日和
それから季節はいくつか巡って、夏。細身でどちらかと言えば儚げな半兵衛様には似合わないタイコウ(だってギョウブがそう呼ぶから)が我が家に来て以来、わたしは半兵衛様以外にも運転されるようになった。
といっても、半兵衛様がタイコウに乗るのは基本プライベートのみで仕事やちょっとそこらへの買い物にはわたしを愛用してくれている。ありがたいことだけど、タイコウはそれでいいのかなぁなんて考えてしまう。
ま、それは追々考えていくとして。

「半兵衛様が貸してくれるっていうからどんな凄い車かと期待してみりゃ…そりゃまぁ、他人に愛車を運転させたくないのは分かるけどさぁ〜」

溜め息、愚痴ときておまけにチャラい。半兵衛様のお知り合いでなければこちらこそ乗車拒否だ。

「うー、しかも暑い!エアコンの効き悪くね?こんなんでよく乗れるよなぁ半兵衛様…」

冗談じゃない。半兵衛様が運転されるときはエアコンフル稼働だ。その上で走行に影響がでないようかなり無茶をしているのだが、それはあくまでも半兵衛様だから、だ。そうでないドライバーに対して無理はしたくない。いや、それにしてもこの男…

「あー…暑い…汗がべたべたして気持ち悪い!あ、でもこれって運動しなくても汗かいて代謝がよくなる…」

独り言が多い。
基本、わたしたちクルマと対話できるのはある一定条件を満たしているドライバーのみだ。もちろん、話せるクルマにも条件があるらしいが詳しいことは分からない。分からないというより、忘れた、というほうが正しいのだろうけど。

「あ、やっぱ窓開けた方が涼しい。くぅぅ〜風が気持ちいい!やっぱ楽しいよな、ドライブって」

ここまで明快に声が聞こえるから、彼も話せるドライバーなのだろう。最近はいつも半兵衛様や三成さんのように静かで落ち着いた人が周りにいたので彼のように賑やかなのは少し懐かしい。

「ドライブじゃなくて、お仕事って聞いてますけど?」

「いけね、そういやそうだった…って…い、いまの声……!」

「ちょっと、動揺するのは勝手ですけど事故らないでくださいよ?わたし、痛いのは嫌ですしそれ以上に廃車の確率が高まる…って、あの、ドライバー?」

当初の目的を忘れているらしいドライバーに声をかけてみるも、反応があやしい。話しかけない方がよかっただろうか。






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