04
吉継が侵入者の元へ辿り着いた時、その者はすでに捕らえられていた。無駄足だったかと思う反面、疑問が浮かぶ。見張りの兵たちがあまりにも騒々しかったのだ。そして。

「か、帰りたいんですけど…!」

喧騒の中心部から聞こえてきた聞き慣れない女の声に目を細める。吉継が近付くにつれ、彼の存在に気付いた兵たちがさっと左右に分かれて道をあける。
現れたのは、あまり馴染みのない着物を身につけた女だった。少女というほど若くはないが、年増でもない。困惑を絵に描いたような表情を浮かべ座り込んでいる。

「さて、たまには刑部に勤しむか…」

言いながら印を結ぶような動きとともに婆裟羅を発動させる。闇の婆裟羅と連動するよう動き出した数珠を見て、周囲に散らばっていた兵は慌てて距離をとる。あれに捕らわれては敵わないと、皆が知っているのだ。それを知らないのは、目の前に座り込む女ただ一人。困惑から恐怖へと移り行く顔を眺め、再び目を細める。

「なに、殺しはせぬ。ぬしには聞かねばならぬことがある故に」

右手を差し向ければ、彼の意思に導かれるよう数珠が女の周りを取り囲む。そしてそこから婆裟羅が放出され、女の身体が動き出す。見えない力に突き動かされ、成す術もないまま女は吉継に連れていかれたのであった。






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