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どれほどの時が経過しようとも決して忘れることができない。そんな記憶を持つことなど予想すらしなかった。自分は秀吉様にすべてを捧げて以後、何も持っていなかったのだから。


(永劫懐古主義)


薄暗い空から氷雨が落ちる、夜。辺りは暗いのに部分的に強烈な目映さが走る。その正体が何かを突き止める前に強烈な違和感を覚えた。やけに地面が近い。そして硬い。直接地面に皮膚が触れているかのようにはっきりと感じられるそれは踏みなれた大地のものとはまったく異なる。土、というよりは岩石の方が近い。だがそれとも違う。
突然、今まで聞いたこともないような轟音が響いた。それは地面に直接振動を伝え、何事かと身を固くしている間にまた遠ざかっていく。咄嗟に身構えようとして出来なかった。身体に力が入らず、頭の中は靄がかかったようにぼんやりしている。何か、大事なことを忘れているような、だがその何かが思い出せない。そもそも自分に大切なものがあったのか?それ以前に自分は、何者であったか。
そこまで考えて、彼の脳は意識を手放した。






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