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「なんつーか…我が妹ながらさすがっつぅか、なァ?」


物陰からこっそり成り行きを見守っていたのだが、名前の暴言っぷりに誰にともなく同意を求める元親。

パーティーとしての形式がここまで崩れてしまっては、誰も気にしないだろうとネクタイをほどいてシャツのボタンを外す。

小太郎も元親を習って整えた髪型を崩し、その長い前髪でいつものように顔を覆い隠す。



「………………」

ただ、元就だけはじっとその場から動かず名前の方に視線を向けたままだった。



「………?」

元就の様子に気付いた小太郎が気遣わしげに窺い、物言わぬ口が珍しく開いた。

「さびしい…?」

けれど元就はそれには答えず、ポツリと呟いた。

「我は宿へ戻る」

「あァ?お前、名前がどうするか心配じゃねぇのかよ」


元親の制止も聞き捨て、元就はさっさと城外へ歩いていった。




「……決められた結末、か」

慌てて後を追う元親や小太郎にはもちろん、元就の小さな呟きは誰に拾われることもなく夜の闇へ溶けていった。











そして。


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ゴォーン…と、辺りに鳴り響く鐘の音。


「何の音、これ?」

「知らねぇのか?これは0時を告げる鐘だ」

「れい、じ…」

「Sure!つまり、宴はお開きって訳だ」


片付けを指示する政宗を他所に、名前は記憶を巡らせた。

0時。何か、忘れているような気がする。

長い間隔を空けて、三度目の鐘が鳴ったところで思い出した。


「私…帰んなきゃ」

「帰るだと?」

ポツリと呟かれた言葉を偶然近くにいた小十郎が聞き咎めた。


「連れも居ねぇのにどうやって帰るつもりだ?」

けれど名前にその声は届かず、一目散に走り出していた。

「おいっ!」

小十郎も慌てて後を追ったが、ホールから出た時にはすでに名前の姿は見えなくなっていた。
足の早さに舌を巻きつつ目を落とすと、階段の途中で何かがきらりと輝く。



不審に思って近づけば、それはガラスで出来た靴だった。辺りを見渡して見たが、持ち主らしき人物も見当たらないし靴も片方しかない。

どうしたものかと、ガラスの靴を見下ろしていたが、やがてひとつの結論を導きだし、とりあえず靴は城で保管することにした。


「…欲しけりゃ、取りに来るだろう」






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