繋いだ手の温かさが涙腺を脆くする

「一緒に、探してみようか」

一頻り涙を流して落ち着いた三成の背中をゆっくり擦りながら、ポツリと呟いた。

「どうして死ななきゃいけなかったのか…どうして三成の大切な人たちがっていうのは、分からないけど…そのことだけを考えてずっと生きていくのは、しんどいよ」

「しかし…それでも私はッ、赦すことなど…!」

声を荒げた三成を宥めるよう、横からぎゅうと抱き締める。夜の外気にさらされた身体は二人ともほんのりと冷たい。

「悲しいときは、我慢せずに思いきり泣けばいい。腹が立ったら怒ればいいし、楽しいときは笑えばいいよ。でもね、何もかも三成が独りで背負うことない。わたしにも分けてくれればいいし…秀吉様も半兵衛様も、そうやって生きてたんじゃないかな」

「秀吉様と半兵衛様のように…」

そう呟いたきり再び黙り込んだ三成から身体を離し、俯いていた顔を上げるよう両手を伸ばす。抵抗することなく向かい合い、ぼんやりとした眸と視線が交わる。

「目、瞑ってて」

できるだけ穏やかに優しい声で告げて、三成を胸に抱き込む。いくら同棲しているとはいえ、出会って一週間も経っていない男性にこんなことをするのは気恥ずかしい。それでも努めて平静に、強張らないよう明るい声を出す。

「ねぇ、心臓の音が聞こえる?わたし、実はちょっと緊張してる。だからドキドキしてるでしょ?分かるかな、これが生きるってこと、生きてるってことなの。この音が聞こえる限り、わたしたちはここで生きてるってこと」

「生きて、いる…」

「そう。ほら、手のひらは温かいでしょ?」

三成の身体を離し、目の前に繋いで手を掲げて見せる。先程まで冷えていた手は、いまはもうほんのりと温かい。ぼんやりと虚ろだった三成の眸が潤みだして、あっと思った時にはほろりと一筋涙が溢れていた。
また泣かせてしまったことに若干の罪悪感を抱きつつ、感情を閉じこめてしまうよりはマシだと思い直す。今まで他人に弱味を見せたり見せられたりという経験がなければ、こんな風に誰かに無理矢理解いてもらわなければいけないのかもしれない。それは寂しくて哀しいことだと思いながら、これからは自分が隣にいてあげようと改めて決意した。




END


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