序章的な、所謂ファーストコンタクト
これは所謂、困ったときの神頼みってヤツだ。朝早くから近所の神社まで来てお賽銭を奉納する。

「試験受かりますように試験受かりますように試験受かりますように…」

周りには誰もいないから願を込めるためあえて口に出す。昔から言うじゃない、言霊には力があるって。思ってるだけじゃダメで言葉にしないと伝わらないって。
だからこうしてブツブツと、神様にお祈りしてるってわけ。試験合格にしてください、ってね!



(序章的な、所謂ファーストコンタクト)



「あーっ!ついに見つけましたぁ!」

なんて、可愛らしいアニメ声が聞こえてつい振り返る。

「……………」

えーと、何、あれ。思いきり目が合ったんだけど、現実離れしたその姿にわたしは盛大に目を逸らした。え、だって羽根生えてない?コスプレにしちゃリアル過ぎないか。だってほら、空飛んでるし…って、えぇっ!?

「空ぁ!?」

ワイヤーでも使わない限りレプリカの羽根で空なんて飛べるわけがない。つい二度見してしまったわたしはそんな自分を責めたくなった。何故って、その空飛ぶアニメ声の可愛らしい物体がわたし目掛けてまっしぐらに飛んできたのだから。

「実は、世界中の神様が封印されてしまって困ってるんです」

「いやいや訊いてないし…」

「この神社に願掛けに来たということは、あなたも何か困り事があったのではないですか?」

「いや、まぁそりゃあ…」

「私に力を貸してください!神様が封印されている解放石を一緒に集めては貰えませんか?」

「えー…」

胡散臭い、というか果てしなく厨二病的な臭いがするんだけどこれって一体何なのか。

「神様の中には、解放してくれたことに感謝して願い事を叶えてくれる神様がいるかもしれませんよ」

なんか、釣られてる感が半端ないんですけど。でもまぁ釣られてみるのもいいかもしんない。

「わかった。いいよ、手を貸してあげる」

「わぁ、ありがとうございます!」

これがまさか、すべての始まりだったなんてこの時のわたしは知る由もなかった。



END


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「見えない臓器の名前は」
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