「…お前か。どうした」
ああもう、面倒臭いなぁ。部屋に入った瞬間からビシビシと伝わってくる不機嫌オーラ。もう本当いい加減うんざりしながらも、さすがは神様と言うべきかそのプレッシャーは凄まじいものがある。それに負けないようわたしはわざとらしく明るい口調で話しかけた。
「いやぁ祝賀会に行ったらコレ貰ってさ。わたしが持ってても仕方ないし、あげるよ」
そう言いながら用意していたオリーブの実を取り出すと、全部で5つもあった。まぁ、仕方がない。これで彼の機嫌が良くなるのなら多少の犠牲も惜しくない。
なんて思いつつオリーブの実を捧げると、不機嫌オーラも若干和らいだ気がした。
「ん。すまない」
よし、まずまず喜んでくれたかな?なんてホッと息をついたのも一瞬で。
「なまえ、いつまでこのボクを待たせるつもりなんだい?もう待ちくたびれてしまったよ」
「タケル…」
馬ッ鹿お前なんで出てきたんだよもう大人しく引っ込んでたらいいものを。心の中で毒づくものの、事態が改善されるわけでもなく、部屋に入った時よりも益々機嫌の悪そうな部屋の主に謝った。
「ごめん、ジーク!外で待ってるようにって何度も言い聞かせたんだけど…」
「………」
うわぁ無言か!ああもう、どうしてくれるのかヤマトタケル!でもわたしだってこれ以上こんな空気の中居座る勇気なんて欠片もない。
「じゃ、じゃあわたしはこれで失礼しまっす!ほら、タケル行くよ!?」
「あぁ、キミもボクに早く逢いたかったんだね…!」
「いいから黙って歩く!」
自己陶酔に近い戯言を口にしながらふらふらしているタケルの背中をぐいぐい押してわたしはジークの部屋から退室。なんでこんなに疲れるんだか…いやもう、その理由は分かりきっているんだけど。
「さぁなまえ!キミとボクとで二人の楽園を探しに行こうか!」
「…………」
(これが日常なんです)
ああもう、アヌビスの包帯でぐるぐる巻きにしてしまいたい。むしろミイラとか?
こんなことなら神様解放のお役目とか引き受けるんじゃなかった…
END