そんな君だから心配したい

ユーラザニアはテンペストに牙を剥かない、とはさすが魔王は器がデカイというか、なんというか。そう感心しかけていると、ズガン!ともの凄い音がしてフォビオが吹き飛ばされた。おいおい体育会系にもほどがあるだろ。血が結構出てるのをそのままに、カリオンがフォビオを担いでいく。

「あ、あの!」

呼び止めたのはなまえだった。さっきからこそこそ隠れてるなぁとは思っていたが、まさか今出てくるとは。というか、魔王カリオン相手に一体何を言うつもりなんだ。

「あの、その人、多分もういっぱい反省してると思うから…あんまり怒らないであげてほしいなって、思って、」

あの鉄拳制裁を見たあとであんまり怒らないで、というのももはや手遅れな感じだが、カリオンは別に気にした風じゃなかった。何も言わずになまえの方をじっと見つめている。何かあったらこれ俺が間に入んなきゃいけないやつだよな…ったくなまえのやつ。まぁ、今さっき不可侵協定結んだばっかで反故とかないだろうけど。

「じゃあな」

俺の心配を他所にカリオンはなまえの言動には特に触れずに転移術か何かで帰っていった。さて、なら次はこっちだな。

「で、お前は何でこんなところにいるんだ?リグルたちと一緒に避難しとけって言わなかったっけ」

カリオンの覇気から解放されてへたり込んでいるなまえには悪いが、締めるとこは締めなきゃいけない。

「い、いやぁちょっと気になって…」

「気になるって…まぁ、無事だから良かったけど命の保証はできないぞ?」

「う、…」

と言うか、気になるってフォビオのことだよな?一体いつどこでどうなってそんなに気になる存在になったのか全く分からない。いや、前世で童貞だった俺にそんな男女の機微とか分からなくて当たり前なのか?まあ別にいいけど…うまくいった暁には報告ぐらいしてもらいたいね。俺もお祝いしてやりたいし。


END


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