一日の終わりである、夕食時。同じ調査兵団の中でも仲の良いなまえとペトラは久しぶりの他愛ないお喋りに花を咲かせていた。
「いいなぁペトラ、本当に羨ましい…」
合間にふと、なまえがそう溢しどことなく憂いを秘めたその表情にペトラは首を傾げた。
「どうしたのなまえ?」
「だってリヴァイ班に任命されたんでしょ?」
なまえの声にわずかな羨望と嫉妬が混じっているのが分かり、思わず苦笑する。特別作戦班に抜擢されてから度々あるのだ。あの、人類最強に近付ける絶好の機会を妬まれて。
「あぁ、みんなそういうけどね。でも本当のこと知ったら、」
「いいよねぇリヴァイ班でオルオさんと一緒なんだもん。本当、羨ましい…」
ところがなまえの口から出てきた有り得ない人物の名前に、一瞬ペトラの脳は完全停止した。もちろん、次の瞬間には事実確認、状況把握に努めるべくフル回転だ。
「え、なまえ…まさかと思うけど、オルオって、」
「ちょ、ペトラ声大きい!もう、なんであんなにカッコイイかなぁ」
「正気なの、なまえ…?」
「え、なんで?」
「なんでって…一応訊くけど、どこがいいの、アレ」
「全部!」
「全部!?早速できた後輩に乗馬中べらべらと自慢げに戦歴喋りまくった挙げ句舌噛むような奴だよ!?」
「それは後輩にちゃんと先輩の偉大さを教えてるってことでしょ?ってか舌噛んじゃうとかなにそれ可愛い!いいよねペトラは。仲良いしいつも一緒にいられて」
お願い考え直して、と必死で止めてみるが、恋は盲目とでもいうべきか。ペトラにとって嫌悪したくなるような言動が、なまえにとってはまったく違って見えるらしい。
あぁ本当羨ましいと頬を染めてうっとりしている彼女をどうにかせねばと、ペトラは妙な使命感に駆られた。
オルオさん大好き!
(オルオ、ちょっといいかな)
(どうしたペトラ…訓練後とは言えお前から呼び出しとは珍しいな。そんなに俺に逢いたかったのか?だが俺たちは今密やかな逢瀬より他にすべきことがある…そうだろ?)
((…一回リヴァイ兵長に躾、いやその前に私が絞める))
END
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bkm