「日向さん、起きてますか? それともまだ寝てますか? うふふ、日向さんってばお寝坊さんなんですから。でもでも大丈夫ですよう、日向さんが起きるまでずっと私が傍にいてあげますからね。起きたとき誰もいなかったら寂しいですもんね。えへへ、日向さんの髪の毛ふわふわ……私のごわごわな髪とは大違い。あああのあの、やっぱり私も一緒に寝てもいいですか……? 日向さんってばこんなに冷えてしまって……うふ、私でいっぱいあったまってくださいね。ああ日向さん、すきです。私みたいなグズでのろまなゲロ豚にも優しくしてくれた、たったひとりの王子さま」
罪木さんはしあわせでした。どうしてかって、それは王子さまをひとりじめに出来たからです。たとえもう何も話し掛けてくれなくても笑い掛けてくれなくても、なんだかもう体だけ残っていればいいかなって。そんなふうに罪木さんは、自信を持って綺麗に保存した王子さまを愛するのです。キスをしたところで、そのくちびるは氷のように冷たくて、目を覚ますことはないけれど。夢も醒めないからいいのです。
大丈夫、世界は上手に、回っていました。
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